住友ベークライトと京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)は、ヒト多能性幹細胞の表面の糖鎖を解析して分化・未分化の状態を判別する技術を開発したほか、その成果を活用した「ヒト幹細胞糖鎖精製ラベル化キット(BlotGlyco)」を住友ベークライトが商品化、4月15日より販売を開始することを発表した。

多能性を有する幹細胞(ES/iPS細胞)はさまざまな細胞に分化する能力を有しており、適切に誘導を行うことで神経、心筋、膵臓β細胞などのさまざまな細胞を得る事ができるため、創薬における薬効評価や安全性薬理試験などの創薬スクリーニング、発生・分化や疾患メカニズムの解明、再生医療への応用など生命科学や医療などへの貢献が期待されている。

しかし、ヒト幹細胞を産業利用につなげるためには、品質の確保されたヒト幹細胞の安定的な大量供給を可能にすることが必要であり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、そうした技術の実用化に向け、中畑龍俊 京都大学iPS細胞研究所特定拠点教授・副所長をプロジェクトリーダーとし、5つのサブプロジェクトで構築されるプロジェクト「ヒト幹細胞実用化に向けた評価基盤技術の開発」を進めている。

今回の成果は、中辻憲夫iCeMS教授・設立拠点長をサブプロジェクトリーダー(SPL)として進められてきた研究成果を活用したもので、住友ベークライトが販売している糖鎖精製ビーズ「BlotGlyco」をベースに、ヒト幹細胞の特徴的な糖鎖が簡便に精製・解析できるようにキット化したもの。

同キットを用いることで、ヒト幹細胞の糖鎖を網羅的に精製・ラベル化することができるほか、目的に応じて、ヒト幹細胞中に多く含まれる糖鎖を簡便に除去することも可能なため、これにより発現量の少ない糖鎖を再現よく分析できるようになったという。

これらの操作は簡便であり、専用装置も不要。また得られたラベル化糖鎖は、糖鎖の定量分析で一般的に用いられるLC-MSに持ち込むことが可能であるため、幹細胞を特徴づける糖鎖の検出感度と分析結果の再現性の両方の向上が可能となり、幹細胞分野における糖鎖研究の進展が期待されるようになるという。

ヒト幹細胞糖鎖精製ラベル化キット「BlotGlyco」