かむことによって注意力が増し、判断するスピードも速まることが、放射線医学総合研究所の平野好幸客員協力研究員と神奈川歯科大学の小野塚実・元教授らの共同研究で分かった。脳活動の変化を「fMRI(機能的磁気共鳴画像法)」で画像化して調べたもので、かむ動作が認知機能に影響を与える仕組みの解明につながるという。

かむ動作で活動が上昇した部位(黄色)と減少した部位(赤色)(提供:放射線医学総合研究所)

研究チームは、20-34歳の17人にガムをかんでもらい、その後、数秒から十数秒の間隔でスクリーンに映る矢印の左右を当てる検査「注意ネットワーク賦活テスト」をした。同テストは「もうすぐ映る」という合図の有無や、矢印の左右の判別を難しく(妨害)する別の矢印の有無により、注意に関する脳内ネットワークがどう変わるかをみる検査で、その時の脳活動の変化をfMRIで画像化し、かむ動作を伴わない場合とで比較した。

その結果、かむ動作を伴う場合は、妨害の有無と合図の有無の全ての組み合わせで、応答速度の平均値が下がった(応答速度が速まった)。特に「合図あり・妨害なし」と「合図なし・妨害あり」の場合に、かむ動作による反応効果が有意に大きかった。またfMRIの結果から、テスト中には大脳の前頭前葉の内側にある「前帯状回」や「左前頭前皮質」(左上前頭回と左中前頭回)などの、注意に関わる脳部位の活動を増強させることも分かった。

これらのことから、かむ動作によって注意ネットワークが活性化されることで、判断速度が向上し、注意力が高まっていることが示された。かむ動作の与える影響をfMRIで画像化に成功したのは、世界で初めてのことだという。

研究論文“Effects of chewing on cognitive processing speed”は米科学誌「Brain and Cognition」(オンライン版、1月29日)に掲載された。

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