NECは2月12日、小田急電鉄にSDR「Software-Defined Radio」(ソフトウェア無線)技術を採用した新列車無線システムの納入を開始したと発表した。本システムは、2016年7月の全面稼働に向け、今後、順次納入していく。

小田急電鉄の新列車無線システム(車上局)

このシステムは、首都圏における列車の過密ダイヤに伴う列車の安全走行への関心の高まりと、総務省の「周波数再編アクションプラン」に基づき、高度化が望まれている列車無線のデジタル化を実現するもの。

従来、鉄道事業者間で車両の乗り入れを実現するためには、鉄道事業者ごとに、それぞれ固有の運用形態にあわせた仕様の列車無線機器を、乗り入れの線区ごとに搭載していたが、本システムの導入により、1台の無線装置で、事業者固有の運用形態に併せた機能・仕様の追加・変更・修正が容易に可能となる。

関東の相互乗り入れする鉄道事業者がデジタル列車無線導入時に装置の仕様を共通化することや車両に搭載する機器を最小限とし、効率的な運用を図ることを目的として作成された共通仕様に基づく初のシステムとなっている。

さらに、ソフトウェア無線の採用により、既設のアナログ無線機との互換性を確保したまま、デジタルシステムへの機能の切換が容易に可能なため、設備更新が全て完了するまで、既設設備と同一の機能/操作を実現する。

また、システム導入後は、現在のアナログ方式からデジタル方式に変更されるため、音声通話に加え、データ通信も容易になる。これにより、運転指令からの指示(通告)や運行情報の文字伝送を乗務員室へのモニタ表示することなどで、情報伝達の迅速化が可能となるほか、乗務員や列車の乗客に対してより正確な情報提供を行うことも可能。また、本システムのデータ通信を活用し、車両故障情報の運転指令所での収集や、運行情報の客室内表示を行うなどもできる。

「SDRデジタル列車無線システム」