オムロンと日本マイクロソフトは1月30日、製造業のモノづくりに直結する、製品および生産品質の向上に向け、生産現場で発生する各種の情報を高速に収集、処理、活用することを目的に、生産現場のビッグデータ活用における協業を行っていくことで合意したことを発表した。

オムロン オートメーションシステム統括事業部 コントロール事業部副事業部長の横見光氏は、「生産現場における環境変化が進んできており、現在、見える化として、生産継続に必要な情報の見える化や生産性向上に必要な情報の見える化が中心になっているが、グローバル競争の激化や環境意識の高まりなどから、顧客への従来以上に高い品質の製品を提供する必要が求められるようになりつつあり、従来のロットやライン規模での管理ではなく、1つ1つの製品個体別に管理することが近い将来求められるようになってくる」と、生産現場を取り巻く変化を指摘。そこで、大量に生産される製造物の個体別のデータを通して、経営判断や事業判断に活用していくことが生産現場に求められるようになってくるほか、グローバル展開を図る上で、海外工場の製造機器のレシピ管理をリアルタイムで国内から実行するといったニーズが高まる今後、ビッグデータの活用が求められるようになるとする。

今回の協業は、そうした生産現場で大量に発生するデータをリアルタイムで処理することで、経営判断などに結び付けようというもので、第一弾のソリューションとして、オムロンの次世代マシンオートメーションコントローラ「Sysmac NJシリーズ」と、SQLサーバをダイレクトに結び付け、コントローラが生成するリアルタイムのデータと生産現場のさまざまな情報を高速に収集、処理、活用する「Sysmac & SQL 直結ソリューション」が2013年4月下旬より提供される予定となっている。

「Sysmac & SQL 直結ソリューション」の概要。NJシリーズは1コア 1.6GHz動作のAtomプロセッサを搭載したコントローラであり、EtherNet/IPとEtherCATに対応しているため、管理と制御を1つの機器で実現できる。今回のソリューションは、EtherCATでSQLサーバにダイレクトに接続することで、高速かつ高精度に連続してデータを送信することが可能になるというもの

「個体管理を実現するためには100%のデータを高速で送り続ける必要がある。従来の経験値としては1秒間ごとにデータをPCを経由してサーバに送信していた。今回のソリューションでは、PCを省くことが可能となり、コントローラからSQLサーバに最速20msの間隔でデータを漏れなく、送信することが可能となった」(同)と、その高速性を強調するほか、「間に余計な機器が介在しないため、コントローラ側のプログラミングだけで通信に対応することができるようになったほか、精度も保証しやすくなった」(同)と、さまざまなメリットがあるとした。 一方の日本マイクロソフト インダストリーソリューション本部の濱口猛智氏は、「現在の製造業において影響を与える主な社会的要因としては"消費者へのパワーシフト"、"製品から製品などにつながるという経験"、"グローバル化と新興国の経済成長"、"高齢化などの人口問題"、"サステナビリティ"、"地球環境の保全などを目指した各種規制の強化"の6つが挙げられる。また、IT側の動きとしては"ビッグデータ"、"クラウド"、"モバイルデバイス"、"ソーシャル"といった新たな動きがでてきており、これらを組み合わせていくと、今まで見えなかったものが見えるようになる。こうした取り組みが、今の製造業には必要」とし、従来の製造現場では、多くの製造機器がネットワークに非対応であったが、ネットワークに接続されることで、そこに蓄積される膨大な量のデータを収集し、活用することができるようになることを強調。「SQLサーバがそうしたニーズに応える。ERPやCRMなどのデータもインテグレーションして、分析系のサービスを活用することで、そうした市場などの動向を交えたレポートの作製も可能になる」と、SQLの優位性を述べたほか、「従来の見える化データは静的なものが多いが、リアルタイム処理が可能である同ソリューションでは、動的なものを積極的に提供していきたい」とした。

なお、同ソリューションの中核となる商品として、オムロンではSysmacオートメーションプラットフォーム対応製品「Sysmac NJシリーズ データベース接続CPUユニット」の販売を2013年4月下旬より開始することを予定しており、これにより、最速20msでマシンデータを、シリアル番号やタイムスタンプなどと紐付けてSQLサーバにリアルタイムで収集できるようになり、製造履歴管理(品質トレーサビリティ)や、機械の保全業務支援のためのデータ活用を容易に実現することが可能になるという。

SQLサーバとBIフロントエンジンや分析・レポートエンジンなどを組み合わせ、「Sysmac NJシリーズ データベース接続CPUユニット」を介して送られてくる各種のリアルタイムデータを処理し、見える化することが可能になる

なお、両社では、オムロン草津事業所内「つなぎラボ」で展示するモデル機械を使用した同ソリューションの検証環境を提供していく予定とするほか、両社および両社のソリューションパートナー企業と連携して、営業・マーケティング活動を推進し、両社で2013年に30社の導入を目指すとしている。

マシンオートメーションコントローラ「NJ5」

握手を交わすオムロンの横見氏(左)と日本マイクロソフトの濱口氏(右)

3つの製造ライン、それぞれの状況を比較したデモ。リアルタイムで不良品の割合を表示する、といったことが可能となる

画像も取り扱うことが可能なため、個体1つ1つを表示して、それぞれの個別情報を確認するといったことも可能となる