IDC Japanは1月7日、国内ITサービス市場でのベンダー売上を産業分野別(金融、製造、流通、通信/メディア、政府/公共、その他)に調査し、ベンダーの競合状況についてまとめた結果を発表した。

これによると、2012年3月期のITサービスベンダー売上におけるトップ5ベンダーである富士通、NEC、NTTデータ、日立製作所、IBMが全ての産業分野でトップ10に入る結果となった。2012年3月期は、いずれの産業分野においても国内ITサービス市場のトップ5ベンダーが強い影響力を持つ点には変化がなく、同市場で1,000億円以上の売上がある主要ベンダー11社の産業分野別業績は、全体としては回復傾向にあるものの、その回復は「まだら模様」となっているという。

具体的には、金融業向けでは営業店系システムや地方金融機関のシステム更改需要などが市場を支えたが、大型案件の不在や全体的な投資抑制の影響で、金融業向けトップ10ベンダーの内、プラス成長を遂げたのは2社にとどまった。一方、製造業向けでは、システム更改に伴うITインフラの構築/最適化や、BCP/DR、グローバルなIT最適化などの需要を要因として、製造業向けトップ10ベンダーの内、7社がプラス成長を遂げたという。

ITサービス全体でプラス成長を遂げたベンダー5社も、政府/公共や金融業向け売上がプラス成長を支えたベンダーや、スマートフォンの普及に伴う通信業向けの需要拡大を捉えたベンダー、流通分野の小口顧客を効果的に獲得したベンダーなど、産業分野別にみた要因はそれぞれ異なるものだったという。

国内ITサービス市場:成長率上位5ベンダーの売上額前年度比成長率と産業分野別寄与度(2012年3月期) 資料:IDC Japan

注目は、各産業分野において大型案件や主要顧客におけるIT支出の抑制が引き続きマイナス要因となったベンダーが多いのに対し、従来と比較すると、より中型/小型の案件が好調要因となったベンダーが多かった点。一方で、金融や政府/公共分野を中心に従来見られた大型の案件は、一時的な要因により支出が増える分野はあるとみられるものの、中長期的には増加していくことは考えにくい状況となっているという。

こうした中、各産業分野で起こっている「案件の小型化」への対応は、これまで大型案件/大型顧客を主要な収益源としてきた主要ベンダーにとっても、重要な課題となっているという。具体的には、システムの共同利用の提案やクラウドサービスを含めたサービスポートフォリオの整備とそのデリバリーの効率化、チャネルの活用、小型案件におけるプロジェクトマネジメント体制の整備といった施策が当てはまる。「ITサービスベンダーはやみくもに今あるソリューションのクラウドサービス化を進めるのではなく、各産業において業態や企業規模に応じたデリバリーモデルを検討し、最適なサービスポートフォリオの整備を急ぐべきである」とIDC Japan ITサービスリサーチアナリストの植村卓弥氏は述べている。