大阪市交通局では地下鉄の民営化に加え、バス事業民営化基本方針の素案も公表している。民営化の目的や意義、課題の具体的解決策やスケジュールなどを取りまとめたもの。大阪市のバス事業については、6月に開催された第14回大阪府市統合本部会議において、「地下鉄事業とは完全分離して運営、かつ民営化」との基本的方向性が示されていた。

大阪市では地下鉄・バス事業に関して民営化が検討されている(写真はイメージ)

素案によると、過去10年間で乗車人員が約4割、運輸収益は約5割減少。2011年度決算は43億円の経常赤字で、1983年度以来29年連続の赤字。過去10カ年で累計326億円が一般会計から繰り入れられてきた一方、累積欠損金は638億円に上るなど、バス事業の現状を「公営企業として破綻状態にある」としている。

その一方で、将来的には高齢者人口の増加が予想されており、バスによる輸送サービスには一定のニーズがあると見込まれることから、持続可能なバスサービスを提供できるしくみの構築が急務であると指摘。バス事業の運営を民間バス事業者に委ねることで、経営の合理化およびサービス向上を図るとともに、不採算であるものの市民生活に必要なサービスについては市が民間事業者を支援することで、輸送サービスを確保するとの方針を示している。

民間事業者への移行に際しては、現在の132系統(路線)を民間事業者が独立採算をめざす「事業性のある路線」62系統と、採算性の確保が困難である「地域サービス系路線」70系統に分類。「事業性のある路線」については、重複系統を集約して59系統とし、効率性を高めた上で民間バス事業者に運営を委ねる。

「地域サービス系路線」については、住民のニーズなどを踏まえながら効率的で利便性の高い路線に再構築を図り、大阪市が一定の支援を行いながら民間バス事業者に運営を委ねる。具体的には、70系統のうち「赤バス」26系統を廃止し、赤バスから移行する3系統を加えた一般バス44系統について統合などを行い、最終的に29系統に集約する。廃止される赤バス26系統については、地域の実情に合わせた移動手段を検討していくとしている。

市営バス路線の民間事業者への譲渡により、2011年度で23億円(基準内繰入8億円、コミュニティ系バス運営費補助15億円)を歳出しているバス事業への一般会計からの補助金については、民間譲渡以降は約10億円未満に抑えられる見込みだという。

同局では今後、2013年2月にバス事業民営化基本方針案を策定。3月に市議会で市営バス事業廃止の議決を行い、4月にはバス事業者を公募。2013年7月には譲渡事業者を決定し、2014年4月より民間バス事業者による運行を行うとの見通しを示している。