大阪市交通局はこのほど、「地下鉄事業民営化基本方針(素案)」を策定した。2014年4月に初乗り料金を値下げし、2014年度半ばに新会社を設立、2015年度より新会社の営業を開始する方針を明らかにしている。
大阪市では地下鉄・バス事業に関して民営化の検討が進められ、今年6月開催の第14回大阪府市統合本部会議では、地下鉄事業に関して「上下一体での民営化」の基本的方向性(案)が示された。これを受けて大阪市交通局は民営化推進室を設置し、具体的な検討を進めてきた。このたび策定された素案では、民営化の目的・意義・優位性、課題の具体的解決策やスケジュールについて取りまとめている。
この中で、今後の事業戦略として「料金値下げ」「終発延長」「関連事業の展開」などを挙げた。地下鉄の現行の初乗り料金は200円だが、利用しやすい料金体系にするため、2014年4月より10円値下げして190円に。その後は民営化後の経営状況なども勘案しつつ、2015年10月をめどに短距離区間でさらなる値下げをめざすという。
終発に関して、現在は民間鉄道事業者と比べて30~40分程度早いが、2013年3月より各路線で終発時間を延長。御堂筋線(上り線)や四つ橋線(下り線)で最大26分、今里筋線(下り線)で最大30分の延長を図る。阪急電鉄と相互直通運転を行う堺筋線でも、ダイヤ調整を行った上で終発延長を行うとしている。
今後のスケジュールとしては、民営化の受け皿となる新会社を2014年度半ばに設立し、移行手続きを行う。同年度内に市営地下鉄事業を廃止し、2015年度より新会社の営業を開始する方針だ。新会社は本社機能のほか、「運輸カンパニー」「メンテナンスカンパニー」「関連事業カンパニー」「事務カンパニー」などによる組織となり、鉄道事業において4,500人規模をめざすとのこと。
一方、企業債・補助金の取扱いや職員の処遇など、民営化に向けて課題も多い。職員の処遇に関して、素案では「交通局退職時の退職手当の支払いと職員の雇用の確保」「労働組合と十分な意見交換や協議を行い、課題の解決を図る」を解決策に挙げている。
大阪市交通局では、今回策定された「地下鉄事業民営化基本方針(素案)」についても今後さまざまな議論を行い、「平成25年度予算案を上程する時期に民営化基本方針(案)として取りまとめたい」としている。