国立天文台は12月25日、チリのアタカマ砂漠で建設が進むアルマ(ALMA)望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計:Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)に高性能スーパーコンピュータ(スパコン)「アルマ相関器(ALMA Correlator)」が搭載されたことを発表した。

同システムは、1億3400万個のプロセッサを搭載し、1秒間に1京7000兆(17,000,000,000,000,000)回(17PFlops)の演算性能を有しており、スパコンの性能ランキングであるTop500の2012年11月発表版で1位を獲得した米国のスパコン「Titan」の17.59PFlopsと演算性能的には同程度を実現している。ただし、アルマ相関器は、電波望遠鏡で集めた信号を合成する目的に特化したシステムであり、通常のスパコンとは計算方法や精度が異なるため、Top500には組み込まれていない。

具体的には、米欧が製造する50台の12mアンテナ(12mアレイ)で受信された電波を処理するための専用スパコンで、これにより50台のアンテナが1つの巨大の電波望遠鏡として使えるようになる。具体的には、多くのアンテナを一斉に1つの天体に向け、あるアンテナで受信された電波とそれ以外のアンテナ1台1台で受信された電波を比較しながら合成していく必要がある。この処理は、最大で64台のアンテナ、組み合わせ数としては2016通りあり、その組み合わせごとに受信した電波を、17PFlopsで処理することとなる。

また、システムとしては、性能のほか、標高5000mという極限環境に設置されることから、空気が薄いため、平地のコンピュータのように空冷ファンを用いて冷却するためには、平地に比べて2倍の量の空気を流す必要があるほか、HDDも空気の薄い環境では故障確率が上昇してしまうことから、HDDを搭載しない構成にする必要があったという。

アルマ相関器は、米国国立科学財団(NSF)が予算を出し米国国立電波天文台(NRAO)が設計・製造・設置を分担したもので、かかった費用は10億円程度だという。

なお、日本が分担した16台のアンテナで受信した電波は、日本が製造したACA相関器で処理される。こちらのACA相関器は1秒間に0.12PFlopsの演算能力を有しており、演算性能的には低いように思われるが、処理すべきデータ量が違うこと、ならびにできるかぎり計算回数を減らし効率的にデータを処理するためのさまざまな工夫を凝らした成果だという。すでにアルマ望遠鏡山頂施設(標高5000m)に設置が完了している。

酸素ボンベを背負って相関器をチェックする、相関器技術者のエンリケ・ガルシア氏。(C) ESO/Max Alexander

山頂施設に設置されたアルマ相関器。写真に写っているものと同じものが合計4台あり、全体で1つの相関器を構成している。(C)ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), S. Argandona