東京都市大学は12月13日、「自然栽培野菜」、「有機栽培野菜」、「慣行栽培野菜」の3種類の農法で栽培された野菜の生産から加工までに使用・消費される水の量(ウォーターフットプリント)を算出した結果、自然栽培農法が最も水の使用量が少ないことを明らかにしたと発表した。

同成果は同大環境情報学部 伊坪徳宏准教授研究室と、エコ食品健究会、三井化学らによるもので、詳細が2012年12月13日から開催されている「エコプロダクツ2012」にて展示された。

ウォーターフットプリントは、原材料調達から生産、廃棄、リサイクルまでの商品一生分の水使用量を算出し、水資源への負荷を定量化する手法で、この計算に水消費原単位が使われている。水資源の乏しい欧州諸国などではすでにその原単位データベース化が進んでおり、日本でも、2010年に伊坪 准教授が初めてデータベースを開発し、以降、企業間で水利用の研究会が発足するなど、水資源保全に配慮した水利用のあり方についての意識が徐々に高まりつつある状況だ。また、国際標準化機構(ISO)でも、ウォーターフットプリントの規格化を進めており、国内外の企業・生産者に対し、環境配慮が求められていることを鑑み、今回、特に水の使用量が多い農作物に関して調査が行われた。

今回の研究における水の使用量の算出には、産業関連表を基に、伊坪准教授が開発した「水消費原単位データベース」が用いられた。

生産過程では、1kgの農作物(トマト、ナス)の生産にかかった水の消費量(リットル)を、3つの農法別(肥料や農薬、除草剤を使用しない「自然栽培野菜」、有機肥料、一部農薬、除草剤を使用した「有機栽培野菜」、従来の化学肥料、農薬、除草剤を使用した「慣行栽培野菜」)にそれぞれ算出し、比較した。

その結果、水分をより多く含むトマトの算出結果では、自然栽培野菜が有機栽培野菜と比較し約29%、慣行栽培野菜と比較した場合では約43%と、水の消費量が最も少ないことが判明した。

また、加工過程として、三井化学東セロが製造した鮮度保持フィルム「スパッシュ」の利用者アンケートを実施(約2700名)し、3つの農法で栽培された野菜に対して、同フィルムがどの位鮮度保持効果があったかの調査を実施した。

この結果、慣行栽培農法ならびに有機栽培農法において約70%の利用者が従来品よりも同フィルムの鮮度保持効果が高いと回答。この回答から、野菜の廃棄物低減に寄与することが推定されるため、その分の野菜の栽培にかかる水の削減に繋がることが予想されたという。

ちなみに 自然栽培農法とは、固定種、在来種の野菜を、無農薬、無肥料、無除草の状態の土壌で生産する農法のことで、野菜の生育に必要な窒素を固定化するために大豆などを使い、栽培するため、土壌を汚染しない、環境にやさしい農法として、近年注目が集まりつつあるという。