産・官・学の異業種、異分野の人たちが同じテーブルに着き、将来の社会のシステムや科学技術などの課題を自由に話し合うユニークなスタイルのワークショップが11月30日、東京都江東区の日本科学未来館で行われた。文部科学省と独立行政法人・科学技術振興機構(JST)が主催したもので、話し合いの成果は同省が進める日本再生のための革新的な「イノベーション拠点(センター・オブ・イノベーション、COI)」の創出プログラムに生かされるという。

COIは大学と企業が総力を結集して次世代の事業化をリードする異分野融合型研究拠点となるもので、その創出のための「COIプログラム」は、同省が2013年度から取り組むCOI事業(来年度概算要求額110億円)の中核に位置づけられている。COIでは、科学技術の個別分野から発想する「フロントキャスト」型の課題設定だけではなく、将来のあるべき社会の姿やニーズなどを見据えた上での「バックキャスト」型の課題設定の方法を取り入れることも特徴だ。

そのバックキャスト型の方法として、同日の「COIワークショップ」で試みられたのが、科学技術者だけでなく人文・社会科学の研究者や産業界、一般市民などが参加して行う「未来に向けた対話」(フューチャーセッション)の手法だ。オーガナイザーを務めた平川秀幸・大阪大学准教授(JST科学コミュニケーションセンター・フェロー)によると、フューチャーセッションとは欧州発祥の対話活動で、組織を越えて集まったさまざまな人々がアイデアを出し合い、将来に向けて協調的なアクションを起こしていくための「未来の知的資本を生み出す場」だという。

この日は大学や官庁、企業、NPO法人などの関係者48人(1人欠席)が参加し、8グループに分かれて「環境・資源・エネルギー問題」「少子高齢化・健康社会」「グローバルな産業競争力」「安全・安心社会の構築」について、今後10-20年後にあるべき姿やそのための課題などを話し合った。メンバーたちはさらに別のテーブルに分散して、他のグループのメンバーたちとも議論を深めた。

ワークショップのルールとして、発言内容は記録されるが、参加者の身元や所属は外部に公表しないという「チャタムハウス・ルール(Chatham House Rule)」(※英国の王立国際問題研究所が発案)を採用したこともあって、最初は遠慮がちだった参加者たちも、すぐに打ち解け、白熱した論争を展開しているテーブルもあった。最後にグループごとに提言がまとめられ、「多様な人が終身現役で活躍できる社会システムの構築」や「挑戦を奨励し、失敗を許容する環境とプロセスをつくる」「安全・安心以外の価値観を認めること」などといった意見が出された。

今回のワークショップで出された提言やアイデアは、COI事業の一環として設けられる「COI推進委員会(仮称)」で課題決定の参考とされるほか、試みたフューチャーセッションの手法も、今後のCOI拠点候補の選定やそれぞれの政策課題の立案などに採用が検討されている。

各テーブルの参加者たちは意見を紙に書いて提出し、みんなで集中論議した。

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