野村総合研究所はこのほど、2011年の純金融資産保有額の世帯数と資産規模の推計結果、および「NRI富裕層アンケート調査」の結果を発表した。

それによると、預貯金や株式、債券などの純金融資産保有額(保有額から負債を差し引いた値)を5つの階層に分類して推計したところ、2011年時点における純金融資産1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」の世帯数は81.0万世帯、純金融資産は188兆円。内訳は、富裕層の世帯数が76万世帯、純金融資産が144兆円、超富裕層の世帯数が5.0万世帯、純金融資産が44兆円となった。

1997年以降のピークである2007年と比べた場合、富裕層の世帯数は9.7%減、超富裕層の世帯数は18.0%減、両者を併せた世帯数は10.3%減少。純金融資産については、富裕層が23.8%減、超富裕層が32.3%減、合計では26.0%減少した。前回調査時の2009年と比較すると、富裕層・超富裕層の世帯数は4.1%減、純金融資産は3.6%減となった。

純金融資産の保有額別にみた世帯数と資産規模の推計(1997年~2011年)(出典:野村総合研究所)

同社は減少理由として、2008年から2009年にかけてリーマン・ショックの影響で株価が急落し、富裕層・超富裕層の資産が大幅に減ったことを挙げている。一方、2009年から2011年については、2011年3月に発生した東日本大震災後の株価や地価の低迷により、富裕層・超富裕層の世帯数と資産規模は小幅に減少したと考えられるという。

また、「NRI富裕層アンケート調査」において、保有する金融資産の内訳を聞いたところ、預貯金(MRF・預け金、金銭信託・貸付信託を含む)の割合は、2007年から2012年にかけて、富裕層では39%から45%に、超富裕層では25%から40%に上昇。反対に、株式の割合は、富裕層では27%から24%に、超富裕層では32%から19%に減少した。これは「株価下落による時価評価額の減少と、株式などのリスク性資産から預貯金などの安全資産への移行が生じた」(同社)ためと見られる。

資産運用に関する考え方を見ると、「金融商品を選ぶ際には、たとえリターンが低くても『安全・確実』を最優先にしたい」とした人は、2007年の62%から2012年には66%(「全くそう思う」と「どちらかといえばそう思う」の合計)に増加。一方、「機会があったらデリバティブなどの最先端商品にも投資してみたい」とした人は、2007年の16%から2012年には10%(同)減少した。

同調査は、2003年~2005年の期間中、高額納税者名簿に1回以上掲載された人(5,000人抽出)を対象に実施。有効回答310人のうち、本人と配偶者の保有する金融資産が1億円以上の186人を集計対象とした。実施期間は2月~3月、調査方法は郵送。