大日本印刷(以下、DNP)と東京大学 石川正俊 教授、渡辺義浩 助教の研究チームは共同で、1分間に250ページの速さで紙の書籍を撮影して画像データとして保存できる世界最速レベルのブックスキャナを開発したと発表した。

ブックスキャナ実用試作機

従来のブックスキャナは、冊子体を裁断してシート状にする必要があり、作業時間を要していた。また、冊子体のままでのスキャンができる場合でも、スキャン時に文字や絵がゆがまないように、紙面を平坦な状態にする必要があるため、読み取り速度が十分ではなかった。

開発したブックスキャナは、東京大学の同研究チームが開発した本をパラパラめくるだけで全ページを画像として保存できる高速画像処理技術をベースに、2010年9月よりDNPと共に共同研究を行い、今回、共同研究の成果として、書籍を冊子体のまま1分間に250ページの速さで画像データ化できるブックスキャナの実用試作機を開発した。

ブックスキャナは、機械による高速ページめくりと、リアルタイムで実行される書籍の3次元状態認識技術、さらに高速のゆがみ補正アルゴリズムを導入することにより、冊子体のままで、電子書籍の要求解像度での高速スキャンを実現。

リアルタイムでの書籍画像の3次元補正実現

高速のページめくり装置を新たに開発することにより、省力化と高速化を実現し、ページめくりの機構が撮像の邪魔にならないように設計を行い、結果として、冊子体を裁断することなく、1分間に250ページの高速スキャンを実現。250ページの本であれば、1冊を1分で電子化できる。

また、ページをめくるときに生じる紙面の3次元形状を1秒間に500回の速度で捉え、最も高品質に電子化できる瞬間を、新たに開発した独自のアルゴリズムに基づき、リアルタイムに識別。識別された瞬間に高精細カメラによる撮像を行うことで、高速かつ高精細な電子化を実現する。これにより、解像度を1インチあたり400画素まで高めることに成功し、電子書籍での利用を可能とした。この技術により、独自に開発した高速ページめくり装置の速度でも、すべてのページを見逃すことなく、高精細で高品質な電子化が可能となる。

さらに、本システムには、撮像された画像と同時に取得した3次元形状を用いて、変形する前の平面の書籍画像に復元する独自の補正技術を備えている。今回、東大の研究チームで既開発の本処理の効率化と並列化を図り、撮像と同時に補正できるシステムを開発。今回の実用試作機では、演算処理装置がフル仕様でないため、補正のスピードは、1分あたり120ページとなっているが、フル仕様では、さらなる並列化により1分あたり250ページの補正が可能となる。

DNPは開発したブックスキャナを同社工場に導入し、図書館蔵書等の書籍電子化サービス向けに、2013年度中の実用開始を検討、ブックスキャナの外販についても今後検討していく。