日本にブランド牛は数あれど、不動のナンバー1に君臨するのは間違いなく松阪牛だと思うのは、東海出身ライターのエゴだろうか? 霜降りのサシ入り牛は日本人の大好物で、品質は世界一。つまり松阪牛はワールドチャンプ・オブ・ビーフに違いない。ところで、その松阪牛の聖地、三重県松阪市で開催される、その名も「松阪牛まつり」をご存じだろうか?
無料で松阪牛のすき焼きが食べられる!
毎年11月末に、同市にある「松阪農業公園ベルファーム」で開催される「松阪牛まつり」。2012年は11月25日に行われる。これは、平成24年で63回目を数える由緒ある催しで、松阪牛の魅力がぎゅっと詰まったゴキゲン過ぎるイベントなのだ。なんせ、遊んで食べて、まるっと一日楽しめるファミリーフェスティバルなのだから。
中でも、多くの来場者がこれ目当てにやってくるという「松阪牛のすき焼き大試食会」がすごい。ななな何と、松阪牛のすき焼きがタダで食べられちゃうのだ! こりゃ大変だ。
肝心のすき焼きは1,500食ほど用意される。主催者的にとっては大盤振る舞いなんだろうが、そんな量で肉に飢えた人民の胃袋が満たされるはずがない。プレミアムなひと皿の争奪戦は熾烈(しれつ)を極(きわ)め、朝早くから長~い列ができる。どんなに長時間並んででも食べたいと思わせるオーラが、松阪牛というブランドには確かに存在するのだ。
しかし、並んだからといって必ずしも食にありつけるとは限らない。世知辛い世の中なのだ。そんなわけで、勝者がいれば敗者もいるわけで、悲しくも試食にありつけなかった人には、別ブースで展開する「焼肉コーナー」をオススメしたい。
こちらは有料ではあるが、一般の店で食べるよりかはリーズナブル。炭火七輪の焼肉をほお張ると、平衡感覚がおかしくなるほどのうまさにクラクラするぞ。
その他、松阪牛や生産地域でとれた農林水産物や地元の特産品、工芸品が手ごろな値段に手に入るのも、このまつりの魅力。ちなみに松阪はお茶の産地でもあるので、お茶関連のブースもいっぱい登場するのが最近の傾向だ。イベントの副題にも「松阪牛&松阪茶 S級ブランド の共演」という文字が見える。気合が入ってるねぇ。
クイーン決定戦の後は総額億単位のセリ市開催
さて、そんな感じで和やか(?)にまつりは進む訳だが、その傍らで、最大のイベント「松阪牛共進会」の準備が粛々と進められている。これは、エントリーされた松阪牛から女王を選ぶもので、いわば「松阪牛クイーン・コンペティション」とでも言うべきか。
ちなみに松阪牛の定義は、黒毛和種の未経産「雌」牛で、松阪市はじめ三重県・中勢地方の一部地域で肥育・登録されたものに限る。つまり雄牛は存在しない。必然的に「クイーン」となるのだ。
朝9時。予選を勝ち抜いた50頭のエリート牛ちゃんが、ズラリと並んで審査を受ける。審査員は肉の張り具合や体つきのバランスなどを入念にチェックする。まつりの浮かれ気分とは裏腹に、畜産農家のプライドがバチバチとぶつかり合う、ガチンコ勝負のビーフコロシアム。
農家はそれぞれ、黒地に白で「松阪牛」と抜かれたはっぴを着用していて、セレモニー感満点だ。晴れて優秀賞1席に選ばれた牛ちゃんが、今年のクイーンになるのだ。
午後からは、そのクイーンをはじめ、エントリーされた牛のセリ市が始まる。このセリ市の金額は驚くべきもの。2011年の優秀賞1席にはなんと2,010万円の値が付いたという。一体どんな牛肉なんだ? 50頭の総売り上げは1億2,517万円、プレミアぶりが半端ない。
なお、50頭の購買リストの中に、なんとダチョウ倶楽部の「寺門ジモン」の名前も。1頭を195万円で落札したそうで、さすが芸能界イチの「肉マニア」だ。
まつりのフィナーレは恒例の華やかな餅まき。ああ、名残惜しいなぁ。また来年まで松阪牛とはオサラバか……感慨に浸っていたところでハっと気がついた。
今まで「まつざかぎゅう」って呼んでたけど、周りの人はみんな「まつさかうし」って言っていたぞ! どうやらそちらが正式らしい。みなさん、松阪を訪れてステーキやすき焼きを注文する時には、くれぐれも漢字の読み間違いのなきようご注意を!