清水建設はこのほど、津波避難ビル「アーチ・シェルター」の設計手法を確立したと発表した。アーチ・シェルターは、震度7クラスの地震や20mクラスの津波に耐え、入居者と避難者を含め最大2400人の命を守ることができるという。

アーチ・シェルターは免震構造の建物「インナービル」と、建物を取り囲む外郭「アーチウォール」からなるハイブリッド構造を採用しており、これにより高い耐震性・耐波性を実現している。

アーチ・シェルターのイメージ

架空の街にアーチ・シェルターを建設したイメージ

アーチウォールは、津波の力を受け流す楕円の筒状構造になっており、外周にはタガの役割を果たす全周バルコニーをフロアごとに設け、構造体の剛性・耐力を高めている。また、高層部のバルコニーは避難スペースとしても機能し、周辺地域からの避難者も利用できるように外部階段が設けられている。低層部については、ピロティにすることで津波を通過させて流水圧を軽減する設計になっている。アーチウォールの高さや壁厚は、想定される津波の高さに応じて任意に変更が可能としている。

耐波・免震のハイブリッド構造

インナービルは高さ27m、間口・奥行き25mほどの6層からなり、ピロティ上部の免震装置を設けた底盤上に建設される。アーチウォールと底盤、隔壁に守られているためインナービルに津波が侵入することは基本的にないというが、万一の浸水時には、ビル中央部の吹き抜け空間に設置された階段で屋上に避難できるようになっている。アーチ・シェルターの収容人数は、インナービルの各階がそれぞれ約300人、屋上が約300人、アーチウォール高層のバルコニー部が約300人で、合計で約2400人。

同社はアーチ・シェルターの建設工事費を同規模の一般的なビルの約1.5~2倍と見込んでおり、建設地は、経済性を考慮して海岸線から500mほど内陸に入った市街地が想定されている。海岸線沿いの建設も可能だが、設計用の津波波圧が高まるためアーチウォールが大型化し、投資効果が損なわれるという。

同社は今後、沿岸部で事業を展開する企業や、沿岸部に市街地を抱える自治体に対して、アーチ・シェルターを提案するとしている。

構造体兼用避難バルコニーと9ヵ所の避難階段