KDDI研究所は9月20日、日本電気(NEC)と古河電気工業(古河電工)と共同で、光ファイバ1芯に7つの光の通路(コア)を設けることにより、従来の光ファイバ7芯に相当するマルチコア光ファイバとマルチコア光増幅器を用いた大洋横断級光伝送実験に成功し、長距離光ファイバ伝送における世界最大の通信容量を達成したと発表した。詳細は、オランダ・アムステルダムで開催される光通信国際会議(ECOC2012)で、ポストデットライン論文として発表される。

現在、ストリーミングやスマートフォンなどの普及により、通信量は飛躍的に増大している。今後、さらに快適かつ利便性の良いネットワークを構築するためには、通信網の基盤である光ファイバの飛躍的な容量拡大が求められる。従来の単一の光の通路(コア)を有する光ファイバは物理的な伝送容量の限界を迎えつつあり、光ファイバ内に複数のコアを形成したマルチコアファイバとその周辺技術の研究が、情報通信研究機構(NICT)を中心に積極的に進められている。しかし、1000kmを超えるような長距離光伝送では、それぞれのコアから漏れた信号の干渉が累積し、大きな信号劣化を引き起こすため、マルチコア光ファイバを用いた大洋横断級の光伝送は実現が困難と考えられていた。

今回、コア間の干渉を最小限に抑えた7つの光の通路(コア)を持つマルチコア光ファイバとマルチコア光増幅器を用いて、伝送距離6160km、総容量28Tbpsの光中継伝送実験を行い、良好な通信品質が得られることを確認した。同成果は、マルチコア光ファイバおよびマルチコア光増幅器の開発、長距離光ファイバ伝送で生じる信号の歪みなどを補正するデジタル信号処理技術、長距離光ファイバ光伝送路を適切に構築する技術などにより実現したという。この結果、長距離光ファイバ伝送における世界最大容量を達成した。

また、通信容量と伝送距離の積で表される伝送能力指数の世界最高記録となる177Pbps・kmを達成した。これは、100Gbps信号を用いた最新の商用波長多重システムに比べて、約15倍の伝送能力向上を実現したことになる。

なお3者は今後、マルチコア光ファイバ・光増幅器のさらなる性能向上と、低消費電力化、小型化により、早期商用化を目指して技術確立を進めていくとコメントしている。

開発品の構成図例