ロンドン・オリンピックでは、日本は過去最多38個(金7、銀14、銅17)のメダルを獲得した。金・銀・銅のメダルはそれぞれに価値あるものだが、さて、その"輝き"を私たちは脳のどこで判断しているのか? 自然科学研究機構 生理学研究所の西尾亜希子研究員や小松英彦教授らの研究グループは、霊長類動物の脳の中に、光沢を見分ける特別な神経細胞群のあることを世界で初めて発見した。
研究グループは、同じ形ながら異なる33種類の光沢をもつ物体画像をコンピューターグラフィックで作成し、ニホンザルに見せたときの脳の活動を記録した。その結果、脳の大脳腹側高次視覚野の下側頭葉に、物体画像の光沢に応じて反応する神経細胞群があることが分かった。さらに活動記録を分析したところ、神経細胞群にある神経細胞が役割を分担して、「鋭く輝く物」「ぼやけた光沢をもつ物」「つやのない物」といった光沢の違いを判別していることも分かった。
小松教授は「光沢は物の質を表す重要な視覚情報で、物の価値判断にも影響を与える。今回確認された光沢を見分ける機能は、おそらく進化の過程で獲得されたもので、金や銀などの美しい輝きを感じるときにも、こうした光沢を見分ける脳の仕組みが働いていると考えられる」と言う。こうした生体の優れた質感認識機能を応用すれば、物体表面の"濡れ"などの状態を瞬時に察知して適応、動作するロボットシステムの開発や、アートや工業デザインなどのさまざまな分野での、豊かな質感を実現するための技術の開発につながるかもしれない。
今回の研究は文部科学省の科学研究費補助金を受けて行われた。研究成果は米国の神経科学会誌「ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(The Journal of Neuroscience)」(8月1日、オンライン版)に掲載された。
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