国立天文台、広島大学、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)の研究者らを中心とする研究グループは8月2日、すばる望遠鏡を用いた観測により、大質量星が一生の最期に起こす超新星爆発が「でこぼこの3次元構造」(画像1・2)を持っていることを明らかにしたと発表した。
成果は、国立天文台の田中雅臣 助教、同・服部尭 研究員、広島大の川端弘治 准教授、カブリIPMUの前田啓一 助教らを中心とした研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、7月20日発行の天文学誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
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画像1(左)は、すばる望遠鏡で観測された超新星爆発「SN2009mi」。画像2は、その観測から推定される爆発の形の想像図。観測されたSN2009miはうさぎ座の方向、約1億光年の彼方にある銀河「IC2151」の中にあり、南アフリカのアマチュア天文家Berto Monard氏により発見された (c) 国立天文台 |
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太陽よりも8倍以上重い星は、一生の最期に大爆発を起こすと考えられている。この爆発は、突如星が新しく現れるように見えることから、「超新星爆発」と呼ばれているのは、天文に興味がない人でもご存じだろう。
超新星爆発は、恒星が秒速1万kmもの猛スピードで爆発する激しい現象だ。この爆発により、それまでの恒星内の核融合反応で作られたり、爆発の衝撃の時点で作られたりしたさまざまな元素が宇宙空間にばらまかれる。我々の宇宙は、ほとんど水素とヘリウムのみで始まったと考えられており、それが多数の超新星爆発を経て現在のようなさまざまな元素に満ちた姿になったというわけだ。
このような重要な役割を果たしてきた超新星爆発だが、実は爆発がどう起きているのか、その詳細なメカニズムは半世紀以上にわたって謎のままだ。しかも、近年の数値シミュレーションの結果、爆発は花火のようなイメージできれいな球状(まん丸)ではなかった、という見解で世界中の研究者が一致するようになってきた。
研究グループは、きれいな球状ではなくなる効果が重要だという。爆発がそうなる理由としては、
という2つのシナリオが有力だが、どちらの効果により爆発が起きるのかは現時点では解明されていない。これらのシナリオを検証するには、実際の天文観測から超新星爆発がどのような形で起きているのかを調べる必要がある。
しかし、詳細な超新星爆発を撮影すること自体が難しい。なぜなら、超新星爆発は1つの銀河内で見ても100年から数100年に1回の割合でしか起こらず、我々の天の川銀河はもちろん、その周辺のアンドロメダ銀河などを含めた局部銀河群で見てもそう簡単には起きていない。我々の天の川銀河なら最も新しいもので1604年、カミオカンデでのニュートリノの検出で有名な大マゼラン星雲の「SN1987A」もその名の通り1987年で、これ以降は肉眼で見えるほどの近距離のものは起きていないという具合だ。
その一方で、毎年大量の超新星が発見されているわけだが、これはそのほとんどが局部銀河群よりもずっと遠方の銀河で起きたものである。およそ1億光年、最遠方ともなれば約120億光年彼方のものも発見されているが、そんな遠方になってしまうと、秒速1万kmもの高速で激しく膨張する超新星でさえ、その姿は「点」にしか見えない。
そこで研究グループは、光の「偏光」(光の振動方向の偏り)に着目し、超新星の光り方の数値シミュレーションを行うことにした。その結果、(1)きれいにそろった指向性を持った爆発(画像3)と、(2)指向性が崩れたでこぼこした爆発(画像4)では、偏光パターンが異なることが判明。でこぼこした爆発の場合は、波長によって異なった方向を持った偏光が同じ天体からやってくるのがわかったのである。
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超新星爆発の形の違いによって期待される、偏光の向きの様子。画像3(左)のきれいな指向性を持った爆発の場合は向きのそろった偏光が期待されるが、画像4のでこぼこした爆発の場合は、波長によってさまざまな向きの偏光が期待される (c) 国立天文台 |
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このような予想に基づき、研究グループはすばる望遠鏡に搭載された微光天体分光撮像装置「FOCAS」を用いて、近傍に現れた超新星爆発の偏光観測を計画した。
しかし、超新星爆発はいつ起きるかわからないため、事前に観測時間を割り当てることができない。そこで、すばる望遠鏡には緊急観測のモードが用意されている。研究グループはこの緊急観測モードを使うことで、2009年に出現した2つの超新星爆発「SN2009jf」及び「SN2009mi」を新たに偏光観測することに成功したというわけだ。
そして観測の結果、2つの超新星爆発から偏光を検出。さらに、波長によってさまざまな偏光の向きの光が同時に発せられていることも発見された(画像5)。つまり、超新星爆発の指向性が崩れていて、でこぼこした構造があることが明らかになったのだ。
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画像5。SN2009jfの偏光のスペクトル(波長ごとの光などの強さの分布)。カルシウム原子が示すスペクトルの特徴(吸収線)を拡大したもの。波長(膨張速度)と共に偏光の向きが変化していることから、SN2009jfが「でこぼこした爆発」であることがわかる (c) 国立天文台 |
これまで研究グループは2005年から2007年にかけてすばる望遠鏡でほかの2つの超新星爆発の偏光観測にも成功しており、それ以前の観測と合わせて合計6つの超新星爆発の偏光観測データが集まった形だ。このようなでこぼこ構造の特徴は、これまで観測された全6天体中5天体で検出されており、でこぼこ構造は決して稀な現象ではないどころか、普通に起きている現象であることがわかったのである。
なお今回の研究は、偏光観測を用いることで、銀河系外で起きた超新星爆発の爆発直後の3次元的な形をとらえることに成功したという点で新しい。また、これから出現する多くの銀河系外超新星爆発にも応用できる画期的なものである点も評価すべきポイントだ。
さらに、超新星爆発がでこぼこした3次元形状を持っていることが確かめられたことから、今回の研究で超新星爆発の3次元的な形状を詳細に探る道が新たに開けた形だ。
一方で、指向性を持った2次元的な形状の爆発を支持する観測結果があるのも事実である。田中助教は、「実際に宇宙で起きている超新星爆発はある程度の指向性を持ちながらも、細部ではでこぼこした形状をしているのかも知れない」コメント。
そして研究グループは、このようなでこぼこ構造は、星が崩壊して、爆発に至る時に起きる対流が起源かもしれず、今回の結果が爆発のメカニズムを解明するための糸口となることが期待されるとの見解を示している。
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