7月31日、文具・オフィス用品等を扱う住友スリーエムは、地震時に書棚から本の落下を抑制する新製品「3M 落下抑制テープ(書棚用)GNシリーズ」の記者発表を行った。幅25ミリメートルのテープを書棚の前端に貼るだけで、地震による書籍やファイル等の落下を抑制しつつ、適度なすべり性で出し入れもしやすいために、通常業務を妨げないという。
求められたのは大きな揺れに対応しつつ、日常業務に支障のない落下防止策
昨年の東日本大震災以降、家庭やオフィスで家具類の転倒や落下防止策がとられた。扉のついている書棚は、転倒防止策とともにガラス飛散防止フィルムを貼ったり、扉開放防止対策をとることで、中の本やファイルが飛び出るのを防ぐことができる。
一方、扉がない書棚に対しては、東京消防庁や日本オフィス家具協会も、家具の転倒防止策が中心で、本やファイルの飛び出し、落下には具体的な対策が提示されてこなかった。 同社が調査したところ、落下防止のために本やファイルの前にベルトを渡したり、すべり止め製品を使おうとしたが、通常の業務で出し入れの邪魔になり、結局使わなくなったという例もあったという。扉がない書棚で、落下を防止しつつ日々の出し入れに支障がない対策が課題となっていた。
そこで開発されたのが、同製品だ。すべり止め効果をもつ特殊なテープなため、書棚の前端に貼るだけで、地震の揺れでも書棚と本や書類の摩擦が増加し、落下せずに書棚の中に留まる。
発表会では、「落下抑制テープ」を貼った棚と貼らない棚を揺らして比較。揺れが始まってから数十秒でテープを貼らない棚の本はすべて落下したのに対し、テープを貼った棚は、テープのところで本の動きが止まり、落下した本は一冊もなかった。
起震車を使った実験でも、その効果が実証された。震度6弱の揺れを起こした場合、テープを貼らない書棚からは本やファイルが落下。しかし、テープを貼った書棚からの落下は見られなかった。
この実験では、書棚の上に本立てを設置し、ファイルを収容していたが、テープを貼ったほうはそこからの落下もなかった。
東日本大震災、図書館でも大きな被害
同社では、昨年の東日本大震災の際、図書館で書籍が落下したことによる被害と、その後の復旧作業が大変だったと聞き、「図書落下防止用テープ」を開発。アイデア創出から2カ月という短期間で製品化したという。
2011年7月に図書館向けの製品として提供をスタート。すでに全国の大学図書館や公立図書館で採用されている。また、財団法人日本図書館協会の「第33回図書館建築研修会『東日本大震災から学ぶ』」の中でも、同社の落下防止用テープによる対策が提案された。
文具・オフィス事業部オフィスサプライマーケティング部長の野端正人氏は、落下抑制テープを使用することの利便性を解説。落下物が減れば、それによるケガのリスクを低減でき、落下物が避難通路をふさぐ事態の防止、落下物に火が燃え移ることを防ぐことができるという。
また、本やファイルが落下しなければ、本や書類を傷めることがなく、書類整理の作業が必要なくなる。さらには即座に書類の閲覧が可能になるので、業務に支障をきたすことがないといったメリットが挙げられた。
書棚を固定し、表面に十分な強度がある素材で使用を
テープの幅は25ミリメートルと狭いため、書棚に本やファイルをいれたまま貼り付けることができる。また、テープが透明なため、美観を損ねることもない。
懸案となっていた本やファイルの取り出しやすさについても、摩擦力を保ちつつ、すべり性を考慮した表面であることと、テープの幅が狭いことで、貼り付けた後も出し入れを大きく損なうことがないという。
使用に適合するのは、書棚表面に十分な強度があるスチールや木製のもの。表面が均一でなくでこぼこしていると、粘着性が弱まる。また、カラーボックスのように表面がはがれやすいものは適さない。プラスチックの一部であるポリプロピレンも適合外だ。なお、使用にあたっては、書棚自体を固定していることが前提となる。
同製品は、同社の文具・事務用品を扱っている文具店、事務用品店、オフィス向け通販、スリーエムオンラインストアで8月中旬から購入可能とのこと。
●3M 落下抑制テープ(書棚用)GNシリーズ
製品タイプ・サイズ
1.品番:GN-180
テープ長:1.8メートル
メーカー希望小売価格:976円
2.品番:GN-900
テープ長:9.0メートル
メーカー希望小売価格:4,200円
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