2012年5月にマンガ新作の連載が開始し、新作アニメが劇場公開およびOVA化、さらに佐藤健主演の実写映画を控えている『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―』。1990年代半ばから後半にかけて「週刊少年ジャンプ」の屋台骨を支え、『るろ剣』の愛称で人気を博した本作は、明治維新前後の激動期を舞台にした物語である。日本人だけでなく、“チャンバラ活劇”として、海外ファンから支持の多い本作だが、はたして海外ではどのように親しまれているのか、調べてみた!
◆“るろうに”の部分を海外ではどう訳す!?
海外でも人気を誇った『るろ剣』。そのタイトルはというと、アメリカをはじめ多くの国では、そのまま『Rurouni Kenshin(ルロウニ ケンシン)』と表記していた。昔の(特に子供向け)作品だと、タイトルやキャラ名が国によって意味不明な変更をされることがままあるが、その点ではまともに扱われた作品だと言える。作品ファンとしてはうれしい限りだが、海外だとタイトルに込められた意味がまったく伝わらないのでは? 単なる人物名だと思われてしまわないか、ちょっと心配である。
ちなみに“るろうに”は「流浪人」のことで、フランスではこの部分に「放浪者」を指す言葉をあて、『Kenshin Le Vagabond(ケンシン ル バガボンド)』としている。ちょっと別の漫画を思い出さないこともないが、これはこれでカッコいい。一方イタリア版のコミックでは『Kenshin Samurai Vagabondo』と“サムライ”入り! いつの時代でも“サムライ”という単語は、スシ、ゲイシャ、ニンジャなどと並んで、外国人が思わず使いたくなるキーワードのひとつのようである。
◆謎のキャラ「サムライエックス」の正体とは?
漫画やTVシリーズはそのまま『Rurouni Kenshin』だったアメリカ版だが、劇場版とOVAでついたタイトルは『Samurai X(サムライエックス)』。「誰それ?」と突っ込まずにはいられない、なかなかぶっ飛んだタイトルである。アメコミに出てくる日本出身ヒーローのようだ。ちなみにこの「X」の正体は、なんと主人公・緋村剣心(ひむらけんしん)。ほっぺたのバッテン傷が「X」に見えるからということでつけられた名称らしい。が、『Rurouni Kenshin』よりも、断然こちらの方が外国人のハートをつかむキャッチーさがあったので、南米などでは『Samurai X』が正式なタイトルとなっているところが多いとか。う~む、“サムライ”パワー恐るべし。
なお、英語版をはじめとする海外版では、登場人物たちの技の名前が日本人には面白く聞こえることで有名。剣心の使う剣術の飛天御剣流(ひてんみつるぎりゅう)が「ヒテンミツルギスタイル」になったり、新撰組出身の斎藤一(さいとうはじめ)の技、牙突・零式(がとつ・ゼロしき)が「ガトチュ・ゼロスタイル」と発音されていたり、秘剣が「シークレットソード」とちょっと違う感じの翻訳になっている。そのくせ相楽左之助(さがらさのすけ)の必殺技「二重の極み」(ふたえのきわみ)はそのまま「フタエノキワミ」だったりとなかなか楽しい。
「二重の極み」を英語に直すとしたらダブル・インパクトあたりが妥当な表現だろうか? 他の海外語版でもそんな感じの翻訳がなされているのだが、英語版は「フタエノキワミー」(しかも棒読みに聞こえる)なので、どうにも脱力してしまうのであった。
“Samurai X”や“シークレットソード”など、近未来を舞台としたSFチャンバラ活劇を想像してしまう海外版『るろうに剣心』。日本人が聞いても浪漫を感じずにはいられないすてきな呼び名である。