福島第一原発事故の取材に当たった記者たちの中で「報道が事実に忠実であった」と考えている人は半数にとどまり、35%が「事実を描ききれないところがあった」と見ていることが、内田由紀子・京都大学こころの未来研究センター准教授らの調査で明らかになった。
この調査は、内田氏が代表を務め、兵庫教育大学、追手門学院大学、甲子園大学の研究者も加わった研究チームが、東日本大震災で報道に携わった人々の思いを分析する目的で3-4月にかけて実施した。インターネットを介しての調査に対し、回答を寄せたのは115人。所属を明らかにした中では全国紙記者が最も多く、次いで放送局、地方紙、通信社、業界紙の順となっている。
回答者は、原発事故とそれ以外の被災報道のどちらも経験した人が最も多かったが、原発事故のみ、原発事故以外の被災報道のみ経験した記者も含まれている。原発事故とそれ以外の被災報道についての答えに大きな違いが見られたのが目を引く。原発事故では「あなたが関わった報道は、事実にかなり忠実なものになったか」という問いに対して、「事実に非常に忠実」「事実にかなり忠実」を合わせても5割強にとどまった。他方、原発事故以外の被災報道に対しては、8割近くが「事実に非常に忠実」ないし「事実にかなり忠実」と答えている。
「最終的に発信された報道は、あなたの意図が十分反映されたものになったか」という問いに対しても、原発事故に関しては「十分」ないし「かなり」反映されたという答えは5割弱。これに対し、原発以外の震災報道に対しては、同じ答えが65%を超えている。
これらの結果から、「原発事故報道では、報道関係者の意図や事実を伝えることに苦労したことがうかがえる」と研究チームは言っている。
東日本大震災に対する報道については、山田健太・専修大学准教授による大震災発生後1カ月間の各新聞報道比較がある。読売は「政治ネタとして扱った記事」、朝日は「原発、放射能についての科学的記事」、毎日は「被災地・被災者に関する記事」がそれぞれ多く、読みやすい記事は産経と東京の両紙が多く載せていた、など全国・都内紙だけに限っても明確な違いが見られたことが指摘されていた(2011年6月13日レビュー【『なっとく』できる大震災報道とは】参照)。
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