NASAの土星探査機「カッシーニ」がとらえた画像から、土星の主要な環の中で一番外側にあるF環に、半マイル(0.8キロメートル)ほどの大きさの物体が突き抜け、痕跡を残していることが発見された。

「カッシーニ」がとらえた膨大な画像のうち、F環を物体が突き抜けた痕跡をとらえた部分を6枚連結させたもの。小さな銛(もり)のような物体が輪を貫いているのが分かる

今回発見された痕跡は「ミニジェット」と呼ばれるもの。この痕跡は、カッシーニが土星を観測した7年間の間に撮影された2万枚の画像の中に、500個ほど認められている。

これまでにも、F環の中で溝やさざ波、また雪玉や凍った物質の塊といった比較的大きな物体が生み出されることは知られていたが、雪玉がその後どうなるかは知られていなかった。

雪玉は土星周辺の軌道上の衝突や潮汐力によって砕け散るが、今回の研究結果は、生き残った小さい雪玉の軌道が変更されることによりF環を突き抜ける、という証拠となりそうだ。

これらの小さな物体は、時速約4マイル(秒速約2メートル)という緩やかな速度でF環と衝突するとみられる。衝突によって、光り輝く氷粒子が物体とともにF環から引きずり出され、20から110マイル(40から180キロメートル)にわたって痕跡が残る。

新たな画像では、F環全体の壮大な眺めと共に、F環を通過したり、周囲で動いている様々な種類の物体から出ている渦を見ることができる。

F環が波打ち、変化する様子をとらえた「カッシーニ」撮影の画像群

カッシーニ画像チームの一人は、「F環は土星の中で最も特殊な環だが、カッシーニの最新の結果を見ると、F環は想像以上に躍動的だ」とコメント。また、「F環の領域は、半マイル(0.8キロメートル)ほどの大きさの物体から、プロメテウスのような100マイル(160.9キロメートル)ほどの大きさの衛星が集まっている。にぎやかな動物園のようでもあり、また見ごたえのあるショーが上演されているようでもある」とも話した。

カッシーニによるこうした土星の環の研究は、太陽系が塵の円盤(土星の周囲に存在する円盤と類似しているが、それよりはるかに大きいもの)から進化する時に起こる活動を理解する助けとなる、とカッシーニ計画の科学者は話している。

NASAが紹介している動画を見ると、小さなきらめく塊がF環を突き抜ける様子が理解しやすい。