JR東海は23日、東海道新幹線における直下型地震や南海トラフ沿いの東海地震・東南海地震・南海地震などが一緒に起きた場合の連動型地震に対する地震防災システムの機能強化計画を発表した。
東海道新幹線の地震対策ではこれまで、沿線での「本揺れ」(主要動:S波)を直接捉えて自動的に列車への送電を停止するための「沿線地震計」(設置50カ所)と、沿線から遠く離れた地点に設置した「遠方地震計」(21カ所)で地震の「前揺れ」(初期微動:P波)を検知して送電を停止し、列車に緊急停止指令を出す「東海道新幹線早期地震警報システム(通称:テラス)」を運用し、2008年からは気象庁の「緊急地震速報」システムとも併用してきた。
強化計画では、直下型地震についてはS波よりも早く到達するP波を沿線地震計で検知し、地震の揺れの大きさ(震度)を推定するように機能を強化し、運転基準の震度4程度を超えると推定した段階で列車に停止指令を出す。これにより直下型地震発生時に列車が停止を開始する時間を1-2秒短縮できる。
連動型地震に対しては、南海トラフ沿いの想定震源域内で地震の規模、マグニチュード(M)が7.0以上の地震が発生した場合、あるいは昨年3月11日に東北地方太平洋沖地震が起きた日本海溝沿いの想定震源域内でM7.5以上の地震が発生した場合には、とにかく「地震が連動する」と見越して列車停止指令を出す。
P波のみを捉えていた遠方地震計については新たにS波検知機能を追加し、「前揺れ」が非常に小さく東海道新幹線沿線に影響がないと判定した地震であっても、その後の「本揺れ」が一定値(加速度120ガル)以上となった場合には列車停止指令を出すようにした。
さらに地震、あるいは台風などによって地上の通信回線が断絶しても着実に列車停止指令が出せるように、バックアップ回線として衛星電話を用いる。各所地震計の予備バッテリーの継続4時間を、沿線地震計では24時間に、遠方地震計では72時間にそれぞれ増強する。
JR東海はこれらの強化策に総額3億6000万円を投じて来月から着手し、2013年7月までに完成させるという。
ちなみにJR東日本はすでに東北・上越・長野・山形・秋田新幹線すべてに、地震のP波をキャッチし列車を停止させる「早期地震検知システム」を導入し、東日本大震災で効果を実証した。
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