光を当てるだけで液化、固化を繰り返す新材料を、産業技術総合研究所スマートマテリアルグループの吉田勝・研究グループ長と秋山陽久主任研究員が開発した。熱処理を必要とせずに、室温でこうした変化を繰り返す材料は世界でも初めて。光刺激によって再利用や再作業ができる接着剤など、新たな光機能材料への応用が期待されるという。

新材料は、糖アルコールを基本骨格に光反応性を持つ複数のアゾベンゼン基を結合させた液晶性物質だ。合成直後は黄色い粉末だが、紫外線(LED光源:中心波長365nm、光量40mW/平方センチメートル)を照射するとオレンジ色に変化して液化した。続いて、この液体に緑色の可視光(LED光源:中心波長510nm、光量20mW/平方センチメートル)を照射すると、再び初期の黄色に戻りながら固化した。

新材料の1つの応用例としては、繰り返し脱着できる「光反応接着剤」が考えられる。実際に、液化した新材料を2枚のガラス板にはさみ、可視光を当てて固化したときの「引っ張りせん断強度」を測定したところ、1平方センチメートルあたり50キログラムの引っ張り力に耐えた。この接着力は、紫外線によって液化するとほとんどなくなるが、可視光を当てると再び固化し、回復したという。研究成果は4月6日、ドイツの科学誌「アドバンス・マテリアルズ(Advanced Materials)」オンライン版に掲載された。