東京大学(東大)と交通安全環境研究所の研究グループは、高速道路上における二酸化窒素(NO2)濃度およびその自動車室内への影響調査を実施。その結果、高速道路の車道上ほぼ全域で大気環境基準の1日平均値を超過するとともに、渋滞、のぼり坂の道路および総延長10km程度のトンネル内では、中央公害対策審議会の短期暴露指針値を超過する値が確認されたことを明らかにした。
特にトンネル内では短期暴露指針値の10倍を超える値を確認。車室内計測でも、車内空調を外気導入モードで走行すると、車室内も車道上とほぼ同様な濃度となることが確認されたと言う。
呼吸器系の疾患の原因となる二酸化窒素(NO2)による大気汚染状況は、大気汚染防止法に基づく大気環境基準により、様々な計測地点で監視が行われている。ただし、この大気環境基準では工場、車道上などは適用外とされており、車道上での計測はほとんど行われてこなかった。
今回、研究グループは、車両に2台のNO2計測装置を搭載。走行している道路上、および車室内のNO2濃度を連続計測することができる試験車を使用し、高速道路上と試験車両車室内のNO2濃度の計測を行った。(この際の走行経路、道路状況は図1の通り)
その結果、高速道路上はおおむね大気環境基準の1日平均値(0.06ppm)を超過しているとともに、渋滞やのぼり坂では中央公害対策審議会の短期暴露指針値(0.2ppm)に近い値が計測されたと言う(図2)。
また、このような道路状況下において外気導入モードで車両を走行させると、走行車両の車室内のNO2は道路上と同等の濃度となることも確認。
特に、総延長10km程度の交通量の多いトンネルにおいては、短期暴露指針値の10倍を越える車道上濃度が観測されるとともに、車室内においても同7倍程度の非常に高い濃度のNO2濃度が確認された(図3)。ただし、このような状況下でも、車両の空調モードを内気循環にすることで、車室内のNO2濃度は大気環境基準の1日平均値程度に抑えられることも確認されたと言う。
今後は他の自動車排出ガスに含まれる有害物質も含め、さらに広範囲で濃度状況調査を行い、実態把握により環境影響評価を実施していくとのこと。
なお、今回の研究結果は、1月10日発行の「大気環境学会誌」2012年1月号に「道路上でのNO2濃度状況とその走行中車室内および周辺生活環境への影響」として発表された。
発表者の名義は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境システム学専攻の戸野倉賢一教授、独立行政法人 交通安全環境研究所 環境研究領域の山田裕之主任研究員、東京大学 環境安全本部の林瑠美子助教の3名となっている。