医薬基盤研究所(基盤研)は、バイオベンチャーであるリプロセルと共同で、創薬応用に重要と言われている肝臓細胞へ分化誘導したヒトiPS細胞由来の肝臓細胞を「ReproHepato」として製品化し、2012年1月からのサンプル出荷および2012年4月からの量産出荷を開始することを発表した。

新薬開発の過程で、問題となるのが薬物誘発性肝障害(肝毒性)だが、医薬品の開発プロセスの早期に肝毒性を確度良く予測することは、創薬コストの削減・開発期間の短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらすため、日本の製薬産業の国際競争力向上に繋がることが期待される。

現在の開発プロセスでは、ヒト初代培養肝細胞の利用により肝毒性評価を実施しているものの、日本では入手が困難であり、その全量を輸入に依存しているため、安定供給および継続性の観点からその利用に限界があることから、より安定かつ容易に使用できる肝毒性評価系の確立が求められていた。

今回、基盤研 幹細胞制御プロジェクトを中心とする研究チームは、独自に開発した遺伝子導入技術(改良型アデノウイルスベクター)を用いて、細胞分化に必要な遺伝子を分化ステージに応じて順次導入していくことで、iPS細胞から肝細胞への効率の良い分化誘導法(通常1~3割の分化効率が8~9割へと向上)を開発することに成功した。

ヒトiPS細胞から肝細胞への高効率分化誘導

同技術を用いて分化誘導した肝細胞は、解析の結果、初代培養ヒト肝細胞と同等の薬物代謝酵素活性を示すことが判明しており、これにより簡便かつ形質が安定した新規細胞評価系の基盤が整備され、新薬開発研究段階での毒性評価試験や薬物動態試験への早期の応用が期待できるようになったとしている。

ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞の形態評価

なお、同細胞はヒトiPS細胞由来のCYP3A4陽性肝細胞で、凍結細胞として提供される。また、CYP1A2/2C9/2C19誘導活性、CYP2D6酵素活性の高い製品も順次発売していく予定とリプロセルでは説明している。