ニュートリノ振動を検証する国際共同実験(OPREA実験)の研究グループは2011年11月17日、arXiv.orgに2011年9月22日に報告したニュートリノが光よりも早い可能性があるとした研究論文の第2版を掲載した。

SPS/CNGS(CERN Neutrino to. Gran Saaso)のレイアウト図

第2版では、OPERA検出器などを前回の研究に比べて高精度化を図ることで、CERN(欧州原子核研究機構:the European Organization for Nuclear Research)のニュートリノビーム源から、約730kmはなれたOPERA検出器までのニュートリノの速度を再度測定した結果を掲載した。

CNGSのビームライン(ニュートリノ発生装置)のレイアウト

再測定の結果、 真空時の光の速度を計算した場合に比べてニュートリノの到達時間は(57.8±7.8(stat.)+8.3-5.9(sys.))nsほど、早く到達したことが確認されたという(前回は60.7±6.9(stat.)±7.4(sys.)ns、ここでのstatは統計誤差、sysは系統誤差)。

LNGSのOPERAタイミング・システムのイメージ図(左)と、測定における各種の統計誤差(右)

これは、前回の実験とほぼ同じで、光の速度に対するミューニュートリノ速度との相対比率が(v-c)/c =(2.37±0.32(stat.)(sys.))×10-5ということに対応するという(前回は2.48±0.28(stat.)±0.30(sys.)×10-5)。また、この結果の信頼度は6.2σとなっている。

左図の左列が1回目、右列が2回目の測定で、下段が、ニュートリノの検出数(黒点)と陽子ビーム出力波形(赤線)を飛翔時間1043.4nsとして重ね合わせたもの。一方、右図は測定器の遅延時間。この飛翔時間から遅延時間を差し引いた結果が、今回の測定時間57.8nsが得られた

なお、研究グループは第2版の最後に、結論として、今回の解析結果は大きな衝撃となるが、まだ未知なる影響などが考えられることは依然変わっておらず、今後も研究を継続して行っていく必要がある、としている。