京都大学の研究チームは、福島県に住む成人について、食事を介した経口、大気粉じんの吸入による放射性セシウム(セシウム134、セシウム137)の内部被曝量評価を実施した。

評価にあたったのは、医学研究科 環境衛生学分野(小泉昭夫教授)および、防災研究所 暴風雨・気象環境分野(石川裕彦教授)の研究チーム。この研究成果をまとめた論文は、日本衛生学会の英文誌「Environmental Health and Preventive Medicine」に掲載された。

論文のタイトルは『Preliminary assessment of ecological exposure of adult residents in Fukushima prefecture to radioactive cesium through ingestion and inhalation(福島県成人住民の放射性セシウムへの経口、吸入曝露の先行評価)』。著者クレジットは、小泉昭夫、原田浩二、新添多聞、足立歩、藤井由希子、人見敏明、小林果、和田安彦、渡辺孝男、石川裕彦となっている。

研究は、福島県成人住民の環境を通じたセシウム134、セシウム137への経口、吸入曝露を評価することを目的に行なわれた。調査期間は2011年7月2日~8日の1週間。通常の食品モニタリングより測定時間を長くし、低濃度まで評価できるようにしたという。また個別の食品だけでなく、日々摂取する様々な食品を1日分ごとにまとめた状態で測定することで、より実態に沿った摂取量を評価した。

経口の評価では、成人一人の1日量の食事を代表するような55セットの食事(水道水を含む)を、福島県内の4地域の商店で購入。また、地域で生産された牛乳(21試料)、野菜類(43試料)も購入したほか、同時に吸入の評価として、12地点において大容量空気捕集装置を用いた大気中エアロゾル採取を行なった。

また、対照となる19セットの食事を京都府宇治市で2011年7月に収集。セシウム134、セシウム137濃度はゲルマニウム半導体検出器を用いて測定した。

結果、福島県では55セットの食事の内、36セットで放射能を検出。京都府では19セットの内、1セットで検出されたという。預託実効線量の中央値は年間3.0μSv。最小値は検出限界以下(年間1.2μSv以下)、最大値は年間83.1μSvであった。牛乳、野菜類のうち、暫定基準値(牛乳200Bq/kg、野菜類500Bq/kg)を超えたものはなかったという。

一方、大気粉じん(ダスト)の吸入による実効線量は9地点で年間3μSv以下と推定。ただし、福島第一原発から半径20km地点の近傍では比較的高い線量を示したという。(飯舘村:年間14.7μSv、浪江町:年間76.9μSv、葛尾村:年間27.7μSv)。

結論として、福島県内での経口、吸入によるセシウム134、セシウム137への曝露は認められたが、総じて基準値以下、としている。

論文より、福島県でのフィールド調査についての図「フィールド調査地点の地図上の位置」。同心円の中心"X"が福島第一原発の位置。"A"は大気粉じん捕集を行った場所。"M"は食事セット、水道水を収集した場所。"V"は野菜類を収集した場所。それぞれ、おおよその地理的な位置を示している