米Googleは10月19日(香港時間)、香港内で韓国Samsungと共同で開催したイベントにおいて「Ice Cream Sandwich (ICS)」(開発コード名)ことモバイルOSの最新版「Android 4.0」を発表した。同時に、ICSを搭載した初のスマートフォン端末「Galaxy Nexus」も発表している。既報の通り同端末はSamsung製で、日本では11月よりNTTドコモが提供を予定している。なおAndroid 4.0の発表に合わせ、Googleでは同SDKや開発ツールのアップデートの提供を開始している。詳細情報についてはAndroid Developers Blogの当該エントリを参照のこと。

本記事ではAndroid 4.0にのみフォーカスして、その概要を簡単に紹介する。まず4.0での最大の特徴はスマートフォンの2.x系とタブレットの3.x系のユーザーインターフェイスが統合されたことにあり、ロックスクリーン画面、ウィジェットのサイズ変更、実行中のタスクのリストメニューからの選択、ホームスクリーンでのフォルダ機能、ホームスクリーンをスクロールさせても画面下に常駐する「お気に入りトレイ」、お知らせメニューの簡単整理、電話の呼び出しがあった際のクイック返答機能など、レスポンスの速さと操作性の向上の両方を目指している様子がうかがえる。また画面下にはソフトウェアで「戻る」「ホームスクリーン」「メニュー」を呼び出すボタンが実装されており、Galaxy Nexusのようにハードウェアでボタンを実装しない端末であっても、すべてスクリーン上のタッチ操作で制御できるようになった。

Android 4.0の新しいホームスクリーン。画面下にソフトウェアボタンが見える

マルチタスク画面をメニューで簡単に切り替えられるようになった

その他の注目点としては、「People」アプリの搭載によるソーシャル連携の強化と、NFCを使った新機能「Android Beam」が面白い。ソーシャルネットワークや電子メールなど、サービスごとにアプリを呼び出すのではなく、Peopleという1つのアプリから「人」をハブとして各機能を呼び出すソーシャルハブ機能を本体で標準実装している。これの応用で、例えばMailアプリでGmailを利用している場合、メールアドレスに表示されている人物の顔をクリックすることで、TwitterやFacebook、SMS、通話など、その人物に接続可能なすべてのサービス一覧が表示され、適時目的に合わせて選択が可能だ。そして今回、NFC (Near Field Communications)の新しい可能性を切り開く新機能が「Android Beam」だ。これは今年のGoogle I/O 2011でも「0-Click Interaction」の名称でデモストレーションが行われていたが、NFCを搭載したAndroid 4.0端末同士を対向で合わせることで、一方の端末が持つデータを転送したり、開いているWebページや地図の場所をそのままコピーできる。また対向の端末でデータを転送すべきアプリが存在しなかった場合、自動的にAndroid Marketを開いてダウンロードすべきアプリを指し示すなど、NFCを介した文字通りの近接コミュニケーションを楽しめる。

アプリがネットワークを介してやり取りしているデータ使用量を計測できるようになった。データ定額廃止時には、事前予防策として使うといいだろう

またシステム機能として、面白くて役立つものが2つある。1つは「スクリーンキャプチャ」機能で、これまでSDKの導入やroot取得でしかできなかった現在端末に表示中の画面をOSレベルで標準で取得できるようになった。最も喜んでいるのはAndroid関連の記事を執筆しているわれわれ文筆業の人間かもしれないが、一般ユーザー視点でいえばゲームのハイスコア画面をキャプチャして友人とシェアするなど、ごく当たり前の行動が可能になるわけで、大きな進歩だといえる。もう1つは少々マニアックだが、個々のアプリがネットワークを介してやりとりするデータを取得、分析して、バックグラウンドでネットワーク帯域を多く消費するアプリを探し出したり、場合によっては使用量にリミットをかけたり、事前に警告メッセージを表示するなど、ユーザー自身が管理できる仕組みが提供されている。米国ではすでに大手携帯キャリア2社でデータ定額通信サービスが廃止され、従量課金制度へと移行している。日本でも容量キャップや従量制の導入を模索する動きが出始めており、事前予防策としてユーザー自身に管理する仕組みが提供されるのは嬉しいことだ。