携帯ネットワーク対応のiOSデバイス(iPhone、iPad Wi-Fi+3G)が、ユーザーの行動を分析できるほど詳細な位置情報を記録しているという。位置情報を研究するプログラマーのAlasdair Allan氏とPete Warden氏が、米カリフォルニアで始まったWhere 2.0で説明した。

Allan氏とWarden氏はロケーションデータを視覚化するプロジェクトを進めており、モバイルデータの活用に取り組むなかで、Allan氏がiPhone内に位置情報を記録したファイルが存在することに気づいた。データは緯度と経度にタイムスタンプが付されている。「最初はどの程度のデータなのか見当が付かなかったが、掘り起こして抽出したデータを視覚化してみたら、ゾッとするほど詳細な行動が分かるようなものだった」とAllan氏。

Alasdair Allan氏(中央)とPete Warden氏(左)

全米鉄道を使ってワシントンDCとニューヨークを往復した6日間。iPhoneが記録した位置データを地図上に配置するとNYC-ワシントン間がドットだらけに

データはiOSデバイス内に保存されるが、iTunesを通じてiOSデバイスのデータを同期するとパソコンにバックアップされる。

Allan氏によると、携帯電話を通じてユーザーの位置が記録されるのは珍しくない。Appleだけではなく、多くの携帯キャリアが同様のデータを収集しているという。ただしデータは端末ではなく、キャリアのサーバに厳重に保管され、位置情報の記録が外に漏れることはない。2人は、モバイルデバイスが位置情報を記録すること自体がプライバシー侵害に相当するとは考えていないが、それはデータがきちんと保管されていてこそだ。「(iOSデバイスの場合、)簡単に読み取れる形でユーザーのマシンにデータが保存されているのが、まず問題だ」とAllan氏。

そこで2人はAppleに対策を促すために、iPhone Trackerという、iTunesのバックアップから位置情報の記録データを抜き出して地図表示するプログラムをオープンソースで公開した。

AppleがiOSデバイスに位置情報を記録させている目的についてAllan氏は、「わからない。完全に憶測だが、ユーザーのロケーションの履歴が必要になる新機能を用意しているのかもしれない」としている。現時点で、位置情報の記録がAppleに送信されている痕跡は見あたらないという。だが、「(バックアップから)デバイスをリストアしたり、マイグレートした時に、データは新しい環境に移っていく。この事実は、データの記録が偶然ではない証拠だ」と指摘した。