日本アイ・ビー・エムは11月15日、今年10月に発表した世界の主要企業のCHRO(Chief Human Resource Officer:人事担当責任者)を対象に実施した調査結果「IBM Global CHRO Study 2010」について、日本の人事担当責任者の傾向を分析した「IBM Global CHRO Study - Japan PoV」を発表した。

同調査は今回で3回目となり、世界61ヵ国、31業種の人事担当責任者(うち日本からは52人)にインタビューしてまとめたもの。

日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ 組織・人材変革 パートナー 大池一弥氏

グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ 組織・人材変革 パートナーの大池一弥氏は初めに、日本の人事担当責任者の最大の傾向として、他国に比べてグローバル化への関心が高いことを挙げた。

グローバルで中国やインドなど新興市場における従業員を増やす傾向があるが、日本ではその割合が他国よりも高くなっている。例えば、グローバルでは中国での従業員増を計画している企業の割合が40%だったのに対し、日本は83%となっている。同様に、インドについては、グローバルが29%であるのに対し、日本は67%となっている。

自国以外の市場に従業員を増やす割合 資料:日本IBM

続いて同氏は、「今回の調査によって、日本の人事担当責任者が課題としてとらえているテーマが"将来のリーダーの育成"、"人材の最適配置"、"コラボレーションとナレッジ共有の促進"の3点だということがわかった」と述べた。

今後、5年間で最も重要となるリーダーの資質としては、「創造性」が最も重要視されている。創造性については、「新たな視点や洞察力によって、ビジネスに新たな価値を持ち込めることなどが求められている」と同氏。

さらに、同氏は「日本の人事担当責任者はリーダーの育成が重要だと認識しているにもかかわらず、そのための予算を増加した企業はグローバルに比べて極めて少ない」と指摘した。

リーダー育成に対する投資の変化 資料:日本IBM

「人材の最適配置」については、グローバルに比べて日本の人事担当責任者はアウトソーシングとオフショアリングについて採用が増えていると考えていることが紹介された。同社でも、アウトソーシングの支援のコンサルティングを行う機会が増えているという。

また、コラボレーションとソーシャル・ネットワーキングへの投資に対しても、日本はグローバルに比べて「増加した」という回答が少ない。「コラボレーションとソーシャル・ネットワーキングの活用を阻害する要因」としては、「システムやツールが技術的にまだ十分ではない」という回答が最多となっている。

同氏は日本の人事担当責任者がそのように考える理由について、「技術が市場に出ていないというより、"どのように活用してよいかわかっていない""技術を活用するためのビジネスプロセスが整備されていない"企業が多い」と説明した。

グローバルでビジネスを展開している欧米企業ではもともと人的ネットワークが発達しており、日本企業よりもコラボレーションとソーシャル・ネットワーキングを利用する素地があるという。「欧米では最近、人的ネットワークをWeb上で可視化するツールが注目されている」と同氏。こうしたツールも見知らぬ人にいきなりコンタクトすることに抵抗がある日本人にとってはハードルが高いと言える。

こうした調査結果の一方で、日本発のリーダーシップを浸透させようとその資質を明文化しそれに沿ったリーダー育成を始めた企業、国やカンパニー制度を越えた人材配置に着手している国内企業など、日本でも新たな試みに挑戦している企業も増えているという。

人事担当責任者が考える3つの課題に対する解決策 資料:日本IBM

日本の人事施策の特徴 資料:日本IBM