米Microsoft, Technology Policy and Strategy and eXtreme Computing Group, Corporate Vice PresidentのDan Reed氏

米Microsoftと国立情報学研究所(National Institute of Informatics : NII)は10月1日、Microsoftのクラウドコンピューティング関連リソースを国内の大学研究者向けに無償で提供するプロジェクトを開始すると発表した。

今回の取り組みは、Microsoftが全世界で展開しているクラウド研究助成プロジェクトの一環として行われる。文部科学省がサポートする、国内最大のIT共同研究プロジェクト「情報爆発時代に向けた新しいIT基盤技術の研究」(通称、情報爆発プロジェクト)に対してMicrosoft Windows Azureのリソースを無償提供するかたちで、リソースの提供量に関しては「クラウドコンピューティング環境なので、ニーズに応じてElastic(弾力的)に提供する」(米Microsoft, Technology Policy and Strategy and eXtreme Computing Group, Corporate Vice PresidentのDan Reed氏)予定だという。

東京大学 生産技術研究所 教授 / 国立情報学研究所 客員教授 喜連川優氏

情報爆発プロジェクトは、2005年7月に発足したプロジェクトで、現在64の研究班が参画している。研究内容は、「次世代サーチ」、「安定安全システム基盤」、「対話エンジン」、「新たな社会制度」の4分野に大別されるが、Windows Azureのリソースは主に「次世代サーチ」、「安定安全システム基盤」において活用される見込み。具体的には、「言語構造を考慮する検索エンジン基盤『TSUBAKI』の精度向上に向け、3億Webページ/200億文の構文/格解析をWindows Azure上で行う」(東京大学 生産技術研究所 教授 / 国立情報学研究所 客員教授 喜連川優氏)ほか、同プロジェクトが構築した15拠点を結ぶLinuxベースのグリッド型実験環境「InTrigger」とWindows Azureとの連携や、東京工業大学が持つ「TSUBAME 2.0」とWindows Azureによるスパコン/クラウド間の連携(アクセス制御、大規模データの高速転送など)といったテーマも挙がっている。

検索エンジン基盤『TSUBAKI』の精度向上でAzureを活用

TSUBAME 2.0とWindows Azureを使ってスパコン・クラウド連携技術も研究

アカデミック分野における助成活動の意義について説明したReed氏は、こうした取り組みの背景について、「研究の歴史を振り返ると、その様式は実験中心のスタイルから始まり、理論中心、計算科学中心へと推移し、現在はデータ中心のスタイルとなっている。すなわち、最近の研究は、センサー技術などを用いて大量のデータを収集し、それを基に考察して結論を導き出すという方法をとるケースが多く、研究とコンピュータ技術は切り離せない関係になっている」と解説。そのうえで、「こうした傾向があるため、昨今の研究者にはコンピュータの高度な活用スキルや管理スキルが求められるようになってきているが、一般の研究者はコンピュータの専門家や管理者になりたいわけではないはず。そこで、Microsoftのクラウド技術や分析ツールなどを提供し、本来の研究活動に専念できる環境を提供していきたい」と述べ、さまざまなジャンルの研究活動を後押ししていく意向を示した。

左から、国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系教授 学術基盤推進部長の安達淳氏、国立情報学研究所 所長の坂内正夫氏、喜連川氏、Reed氏、マイクロソフト 最高技術責任者の加治佐俊一氏