星々のあいだをガスやちりで埋めるようにして拡がる星雲、いろいろなタイプの形があるが、今回紹介するのは、逆V字状というかなり珍しいものだ。まるで、宇宙空間に浮かんだ水墨画のような幽玄さをたたえている。

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたおうし座の方向にある「IRAS 05437+2502」。星雲としては小ぶりな部類に入る

この星雲で目を引くのはなんと言っても、逆V字の頂が明るくひかっているところだろう。何がこのように光らせているのか、科学者たちにもよくわかっていないという。この付近は新しい恒星が誕生している地帯でもあり、生まれたての星の輝き、という説もあるが、推測の域を出ない。

星雲の名前に付けられている"IRAS"とは、1983年に最初にこの天体を捉えた赤外線天文衛星「IRAS(アイラス)」にちなんでいる。IRASは10カ月間のミッション中、それまで未発見だった数多くの赤外線源を捉えたが、この天体もそのひとつだ。27年前にたくさんのおくりものを届けてくれたIRASの後を継ぎ、現在はJAXAの「あかり」が全天観測用の赤外線天文衛星として太陽同期軌道をまわっている。