NTTは、1本の光ファイバに、1波長171Gbpsの信号を432波長多重させ69.1Tbpsのデータを240km伝送させることに成功したことを発表した。これまでの光伝送容量の記録は32Tbpsで、今回の同社はその容量を2倍以上更新したこととなる。

最近の主な10Tbps以上の大容量伝送実験

送信信号には25GHz間隔で高密度波長多重が実現できる16QAM方式を採用し、受信部には新規デジタル信号処理技術を用いて復調している。

具体的には、送信部では16QAM変調方式と偏波多重方式を組み合わせて、1チャネル(波長)あたり171Gbpsの信号を生成。シンボルレートは21.4Gbaud(171Gb/sの1/8)で、16QAM信号は変調器の中で強度比が2:1となる2つのQPSK信号を発生させ、それを合波することで生成している。171Gbpsは160Gbs信号(ペイロード)をOTNフレームに収容する場合を想定した速度で、誤り訂正符号と波長多重管理用オーバヘッドバイトが含まれる。25GHz間隔で並べた1527~1620nmの光信号432波を波長多重し、69.1Tbpsの信号にしている。

偏波多重16QAMによる171Gb/s信号の生成

一方の受信部ではコヒーレント受信とデジタル信号処理技術を用いている。コヒーレント受信は従来のNRZ信号の直接受信に比べて受信感度が3dB以上向上する。高速な光信号は、光ファイバを伝播する過程で波長分散および偏波モード分散による波形歪みを受け、伝送距離が制限される要因となるが、デジタル信号処理技術による歪補償を行い、性能を向上させた。また、16QAM信号を復調するのに、新規のアルゴリズムを用いて余分なオーバヘッド信号が不要なパイロットレス処理を行った。

デジタルコヒーレント信号処理技術

C帯と拡張L帯を組み合わせた10.8THz(従来の1.35倍)の増幅幅を有する「超広帯域光増幅技術」を用い、69.1Tbps信号光の240km伝送を実施。光増幅中継においては、分布ラマン増幅を用いて低雑音化を図ると同時に、光強度が高まるために発生する非線形光学効果を抑圧する工夫を施すことで、良好な特性を実現した。

240km伝送後の受信特性と光スペクトル

今回の伝送に用いられたQAM変調器、波長可変光源、コヒーレント受信用回路は、NTTのフォトニクス研究所が未来ねっと研究所と連携して開発したもので、光変調器には平面型光集積回路とニオブ酸リチウム(LN)変調器をハイブリッド実装したPLC-LN変調器を用い、1台の変調器で16QAM信号を安定に発生させている。また、光源には従来より線幅が狭い狭線幅波長可変DFBレーザを用いて、位相雑音を低減させている(線幅100-200kHz)。受信部には小型集積化が可能な平面型光集積回路を用いた偏波ダイバーシティ型90度ハイブリッドが使用されている。

なお、NTTでは、今回の研究をベースに今後増加が予想されるデータトラヒックを1本の光ファイバに効率的に収容させた、より経済的な基幹光ネットワークの実現を目指した研究開発を進めていくとしている。