Gears - Improving Your Web Browser

Los Angeles Timesに掲載されたWhat's powering Web apps: Google waving goodbye to Gears, hello to HTML5の記事を巡っていくつかの報道がおこなわれている。Los Angeles Timesの記事にはGoogleのスポークスマンとやりとりしたとみられるメールの一文が掲載されており、Googleは今後HTML5への取り組みを強めること、かわりにGearsが注力の対象からはずれることなどが紹介されている。なお追加情報として、将来的に開発者にはHTML5を使って欲しいが、現在のGearsのサポートがなくなるわけではないという点が発表されている。

Googleは2007年5月30日(米国時間)、Webアプリケーションにオフライン機能やデータベース機能を提供するアプリケーションGoogle Gearsを発表した。WebサービスやWebアプリケーション、クラウドでのサービス提供を主眼におくGoogleにとって、Google GearsはノートPCやモバイルデバイスなどネットワークの接続と切断を繰り返すようなデバイスで自社サービスの使いやすさを向上させるために欠かせない技術。OSSとして公開もされており、すでにGoogle以外のサードパーティもGearsを使う機能を提供している。

今回GoogleがGearsへの注力を取りやめHTML5に注力すると発表した背景には、大きく考えて次の理由があるとみられる。

  • iPhone / iPod touchにおけるオフラインやデータベース機能の提供
  • そのほかのモバイルデバイスにおけるオフラインやデータベース機能の提供
  • 開発リソースの集約

Gearsを使えばモバイルデバイスにおけるGoogleのWebアプリケーションはより快適に使えるようになる。しかしこれはGearsを提供できればの話だ。AndroidやChromeOSのようにGoogleが主導的立場でならこれは可能かもしれないが、iPhoneでそれを実現するのは難しい。またそれ以外のすべての携帯電話にGearsをプレインストールしてもらうようにするにも、ほぼ不可能といえる。Google側からすべてのOSやデバイス向けにGearsを移植して提供するというのもあまり現実的ではない取り組みのように見える。

しかしこれがHTML5で定められた機能ということになれば、話は違ってくる。標準規約であるHTML5に対応しているかどうかは、数年後のインターネットにおいてそのプロダクトが標準機約に準拠した使えるプロダクトかそうでないかを決めるひとつの判断基準になるとみられる。どのベンダも可能な限り対応しようと考えるだろう。Gearsをオープンソースソフトウェアとして公開したり最新技術を投入して開発するよりも、同じ機能をHTML5の仕様として策定した方が確実な普及が見込める得策だ、というわけだ。

Googleは一貫してインターネットの利用者を増やし、直接的にせよ間接的にせよ広告で売上を出すというビジネスモデルを採用している。Googleのサービスが魅力的であればあるほど、ユーザはインターネットを利用するようになる。そのためにはオフライン機能やデータベース機能を強化する必要もあり、その最善の手段がHTML5への取り組みの強化というわけだ。ここ数年でAndroidやChromeOSといったモバイルデバイス向けの取り組みを一気に進めており、今回のGears採用の見送りはこうした同社の動きと一致する。