健康食品や医薬品の販売サイト「ケンコーコム」を運営するケンコーコムは26日、日本国内と海外在留邦人向けに健康関連商品を販売するECサイト『Kenko.com Singapore(ケンコーコム シンガポール)』の運営を行う新会社、Kenko. com Singapore Pte. Ltd.を設立したと発表した。

ケンコーコムのシンガポール拠点となる新会社が開設したECサイト『Kenko.com Singapore』トップページ画面

ケンコーコムは、医薬品やサプリメントなどの健康関連を販売するサイトとして2000年に開設、2008年度は売上高が100億円を突破した。「健康関連商品を販売するサイトとしては日本最大級となっている」(ケンコーコム)。

同社では、「サイト開設以来、アジア・世界への進出を考えてきた」(同社代表取締役社長の後藤玄利氏)ことと、「広告の表示規制や(改正薬事法に伴う省令による)医薬品のネット販売規制により、日本を拠点にアジアや世界に出て行くことは困難」(同氏)との理由から、シンガポールを拠点に健康食品や医薬品を販売する100%子会社、Kenko. com Singapore Pte. Ltd.を2009年9月に設立した。

新会社は10月26日に、ECサイト「Kenko.com Singapore」を開設し、医薬品の販売を開始した。当面は日本から空輸で運んだ大衆薬をシンガポールを拠点に、日本国内向けに販売する。ユーザーは海外からの個人輸入として、厚生労働省の省令でネット販売が禁止されている第1類・第2類の日本の医薬品や、排卵日検査薬を購入することができる。決済は日本円、支払い方法はクレジットカードで行う。

ケンコーコムの海外展開予定

2009年内には、100万人といわれる海外在留邦人向けに日本語で医薬品などの販売を開始。2010年には、英語や中国語などでアジアやその他地域に、医薬品に加え、健康食品や化粧品、日用品など健康関連商品を、海外製も含めて販売する予定としている。

ケンコーコム代表取締役社長の後藤氏は、26日に東京都内で開いた記者会見において、シンガポールを新たな拠点としたことについて、「物流インフラがしっかりしていることや、IT環境が充実している点などを考慮した」と説明した。また、「英語と中国語の双方を話せる多言語に適応した人材が豊富で、ルールの策定などにおいても透明性がある」とも述べた。その上で、「シンガポールをハブにアジア・世界における(健康関連ECサイトとしての)No.1を目指す」と目標を述べた。

ケンコーコム代表取締役社長の後藤玄利氏

新しく開設したサイトから、厚労省がネット販売を禁止している1類・2類の医薬品が個人輸入として購入できることへの同省の対応については、「会社名を述べたわけではないが、『こういったビジネスは可能か』と厚労省に確認した上で、別に問題ないとの回答を得ている」と説明した。

省令による影響により、こうした形での海外進出になったのではないかとの見方に関しては、「2000年にケンコーコムを開設した時から、日本は成長性が乏しいため、グローバルに展開したいとの気持ちはあった。省令による医薬品の販売減は5億円ほどあり、(省令により海外進出が)若干タイミングは早くなったかもしれないが、今日からのサービス開始に至った」と述べた。

国を相手取っての医薬品ネット販売の権利確認と省令の無効確認・取消を求めている訴訟については、「(省令は)日本というマーケットで、閉ざされた世界でいびつな競争が発生している(原因となっている)」としながら、「訴訟で違憲判決が出て、日本の法体系が世界の標準になれば、日本の拠点から海外に販売するなど(海外進出のやり方が変わってくる)可能性はある」と話していた。