「お互いの従業員の引き抜きを止めないか」という米Apple CEOのSteve Jobs氏の提案に、米Palm前CEOのEd Colligan氏がその提案を拒絶していたという。米Bloombergが8月20日(現地時間)に報じている。この提案が行われたのはAppleが初代iPhoneを発売した直後の2007年8月のことで、当時Palmからの引き抜き攻勢に悩んでいたApple側からの申し出だったという。

今回の件はColligan氏からのコメントとしてBloombergが報じたもの。当時、Palmには元Apple役員のJon Rubinstein氏が在籍しており、Rubinstein氏がAppleから次々と従業員の引き抜きを仕掛けていたという。こうした行為を見かねてのJobs氏の陳情だったようだ。Colligan氏は申し出を拒絶した理由ついて、「不正なもの」という考えを述べている。なお、Rubinstein氏はColligan氏の跡を継いで現在Palm CEOとなっており、同氏の指揮の下で誕生したPalm PreはiPhone対抗スマートフォンの最有力候補の1つとしてヒットをとばしている。

人材に拠る部分が大きいIT業界、とくにシリコンバレー界隈ではより良い待遇や会社との関係を求めて転職を繰り返すエンジニアが多い。こうした一部のエンジニアの存在がその会社の命運をひっくり返すほどの影響力を持っていることもあり、リクルーティング活動はこうした企業の間で重要なポジションを占めている。だが一方で露骨で激しい引き抜きは企業活動の停滞や他社への技術流出、企業関係に悪影響をもたらすことも多く、雇用契約の段階で転職禁止の縛りを入れたりすることが一般的だ。また先日TechCrunchが報じているように、企業間での引き抜きを防止する紳士協定が結ばれるケースもある。こうした商習慣が競争を阻害する不当行為に当たらないかという声もあり、米司法省(DOJ)では捜査を開始しているという。