米Sprint-Nextelは7月28日(現地時間)、米Virgin Mobile USAの買収で合意したと発表した。買収総額は4億8,300万ドルになるが、これにはSprintがすでに保有しているVirgin Mobile USA株13.1%の金額も含まれている。Sprintは自社の携帯回線を他社に貸し出す事業では米国最大手として知られているが、Virgin Mobile USAはこのSprintの回線を借りて携帯ビジネスを展開する全米最大手のMVNOである。ちょうど、回線事業者が自身の顧客であるMVNOを取り込んだ形になる。

Virgin Mobileはその名が示す通り、もともとは1999年に英国でVirginグループの携帯電話事業者としてスタートした企業。既存の携帯電話事業者の回線を借りてサービスを展開するMVNO (Mobile Virtual Network Operator)の形態で事業を展開する点に特徴があり、英国でのビジネスもT-Mobile UKとの提携で同社の回線を借りている。同社は世界各国に独立した現地法人を設置してローカルビジネスを展開しているが、英国と同様に現地の携帯事業者との提携でMVNOとなっており、たとえば米国であればSprint-Nextel、カナダはBell Canada、フランスはOrange、シンガポールはSingtelといった事業者をパートナーに選別している。またプリペイド形式という安価な料金設定と手軽さ、そしてVirginブランド活かした若者をターゲットとした戦略展開で一定の成功を収めている。

厳しい経済情勢のなか、Virgin Mobileは事業撤退が相次ぐMVNO事業者では数少ない成功例の1つとして知られている。米国ではESPNやDisneyといった事業者が同様にSprintなどから回線を借り受けてMVNOをスタートさせているが、2-3年という短い期間で撤退に追い込まれている。この中でもVirgin Mobileは生き残り続けており、2002年から7年近い年月が経過している。2008年には韓国Samsungの最新端末を積極的に導入してデータ通信需要中心に高いARPUを実現して注目を浴びた米Helioを買収し、米国では唯一ともいえるMVNO事業者の生き残りとなった。

唯一の成功例とはいえ、MVNOとしてのビジネスが依然厳しいことには変わりない。今回のは救済合併ではないが、事実上唯一ともいえるMVNO事業者が米国から消滅したことになる。Sprintでは買収の理由を「成長中のプリペイド市場で優位に戦うため」と説明しており、むしろ飽和が近付きつつある米国の携帯電話業界でSprint自身がいかに生き残るかという点に注視しているようだ。