NECは5月12日、2008年度通期の連結業績を発表した。それによれば、5月8日に発表した業績予想とほぼ等しく、売上高は前期比8.7%減の4兆2,156億円、営業利益は前期比1,630億円減の62億円の赤字、純利益は前期比3,193億円減の2,966億円の赤字となった。

2008年度通期の連結実績

売上高は、IT/NWソリューションで1,422億円減、モバイル/パーソナルソリューションで625億円減、エレクトロンデバイスで1,781億円減と、世界同時不況の影響を受けすべてのセグメントで前期比マイナスになっている。

セグメント別実績

NEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏

2008年度の実績を踏まえた課題についてNEC 代表取締役執行役員社長 矢野薫氏は、すべてセグメントで固定費を削減し、損益分岐点を引き下げ、収益力のアップを図る必要性を強調し、一方成果として、NGNの事業拡大や米ネットクラッカー社の買収など、グローバル事業に向けたM&Aの実行を挙げた。矢野社長は「これで成長に向けた布石ができた、来年度は確実に成果を上げたい」とし、現在20%程度のグローバル事業の比率を、なるべく早い段階で30%に引き上げたいという考えを示した。

2008年度の成果と課題

来期の業績予想は、景気の回復が見込めないことから売上高は今期に比べ11.5%減の3兆7,300億円とするものの、固定費を2,700億円圧縮することにより、100億円の利益を確保する予定だという。矢野社長は「売上高は現時点で達成可能なものを設定した。この売上を前提に費用を削減して利益を確保し、復配を実現する(今年度は配当0円を予定)」と述べた。

2009年度の業績予想

2,700億円の固定費削減で利益を確保

来期注力する事業としては、クラウド事業を挙げ、中期目標として5,000億円の売上目標を掲げた。また、PCと携帯電話によるシナジー効果発揮する新たな事業の創出にも取り組むほか、「環境・エネルギー事業推進室」を新設し、短期的には自動車向けリチウムイオン電池事業、中長期的には非自動車向けの環境エネルギー事業に注力し、3年後に1,000億円の事業規模を目標にしていくという。

C&Cクラウド戦略

キャッシュフローについては、「自己資本率が21%程度あるので必要だとは考えていない。タイミングを見ながら、成長を目指すときになったら考えるが、いまはそのときではない。早くやればいいものではない」とし、当面増強する考えがないことを明らかにした。

ルネサステクノロジとの統合を発表した半導体事業は、これまでNECの3本柱の1つに位置付けていた事業だが、これについて矢野社長は「半導体事業は、世界で1、2位を争う商品をもっていないと利益がでない構造になっている。そのためにルネサスとの統合を進めていく。半導体事業に思い入れがないといえば嘘になるが、こだわりを捨てて、勝組に残れる会社にする」と述べた。