総務省は22日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の会合を開き、B-CASカードの見直しに関する議論の中間報告を行った。B-CAS方式と並存する新方式の技術仕様を「ルールを遵守する全てのメーカーに開示する」方針が明らかにされた。

「非営利のライセンス発行・管理機関」を提案

B-CAS(ビーキャス)は株式会社ビーエス・コンディショナル・アクセス・システムズ(BS Conditional Access Systems)の略。同社が提供する放送受信方式をB-CAS方式と呼ぶ。地上デジタル放送におけるデジタル著作権管理(DRM)の一部として、正規の機器を認証する限定受信方式として利用されている。

だが、総務省の情報通信審議会第5次中間答申では、B-CAS方式の見直しを行うべきとする方針を明示。これを受け、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の技術検討ワーキンググループ(WG)では、今後導入を検討すべき地上デジタル放送の著作権保護のための新たな技術方式として、(1)B-CASカードと同じカード方式、(2)チップ方式、(3)ソフトウェア方式、の3種類を検討してきた。

22日に開かれた同検討委員会第51回会合では、技術検討WGでの議論についての中間報告を実施。同WGでの議論においてコンセンサスが得られた事項について、説明がなされた。

中間報告では、「地上デジタル放送について、B-CAS方式以外の新たな選択肢として、コンテンツ保護に係るルールを遵守する者の全てに対し、コンテンツ保護に係る技術仕様の開示を制限しない方法を検討する」方針を明示。チップ方式にするかソフトウェア方式にするかなど技術方式の詳細については示さなかった。

また、新しい方式においてライセンス発行・管理機関を設けるとした上で、この機関について「組織・運営上の透明性が確保されていることが重要」とした上で、「非営利であり、かつ透明性の高い法人であるべき」と提案している。

さらに、これらの技術方式の外にあってルールを守らない者に対しては、「制度的(法律的)対応の検討が必要」と明記。B-CAS方式についてはこのまま存続させるとし、カードの小型化や、受信機器などへの事前実装を行うとしている。

新方式「検討する」との文言に疑念噴出

中間報告が行われた後の議論で、検討委専門委員で主婦連合会常任委員の河村真紀子氏は、「(B-CASに代わる)選択肢を拡大することについて、まだ合意できていないのは、(B-CAS方式のみを存続させようという)何らかの抵抗があるのではないかと思ってしまう」と、中間報告で「検討する」という文言にとどまっていることを批判。

検討委委員で生活経済ジャーナリストの高橋伸子氏も、「本当にこの辺で結論が出ないと、(検討委員会の)存在意義が問われる」と指摘。「これから地デジ対応機器を購入しようとしている人達は、(積極的に購入したと思われる)これまでの購入層と違う人達であり、(新方式を導入して機器の選択肢を拡大するなどの)対応の迅速性が求められる」と訴えた。

こうした意見に対し、検討委専門委員でNHK総合企画室統括担当部長の藤沢秀一氏は、「なかなか厳しい意見が出されたが、(新方式を)進めるのが嫌だから進めないと考えている人は技術検討WGにはいない。今回の中間報告は基本的な考えを示したもので、これからはどういう方式でやっていくかが重要になる」と、「検討する」と書いてはいるものの同WGでの議論は新方式導入に前向きに行われていると説明した。

WG主査で慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏も、「(今年7月上旬にも予定されている)第6次中間答申でどういう報告ができるか、引き続き議論していきたい」と述べた。

総務省では第6次中間答申に向け、5~6月に集中的に検討委員会を開催し、B-CASと並存する新方式についての議論を行う予定。