ソニーは2月27日、4月1日付けの役員人事を発表し、中鉢良治社長が退任し、ハワード・ストリンガー会長が社長を兼任する人事を発表した。中鉢社長は取締役 代表執行役 副会長になる。また、併せてエレクトロニクス部門の組織再編も発表した。
「一定の成果を収めることができた」と中鉢氏
中鉢氏は記者会見で、「2005年6月に就任して新しい組織に変更し、2007年には過去最高益を出すなど、一定の成果を収めることができた。1月に発表した経営体力強化策は、当初の予定以上に順調に進んでおり、損益分岐点の改善やキャッシュフローの改善では、ある程度目処がついた。今の世界不況の根底には、ライフスタイルや市場の変化がある。ソニーの新しい方向性は、若い新しい人たちで作るのが最適だ」と、退任の理由を述べた。
ソニーは、今回の役員人事とともに、収益力の改善と競争力強化を目的に、エレクトロニクス事業とゲーム事業の組織改革を行い「ネットワークプロダクツ&サービス・グループ」と、「コンスーマー・プロダクツ・グループ」の2つの大きなグループに再編する。
ネットワークプロダクツ&サービス・グループは、プレイステーションなどを扱うソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)やVAIOのほか、ウォークマンなどのモバイル製品が含まれ、同グループのプレジデントには、SCE 社長兼グループCEOの平井一夫氏が就任する。このグループでは、収益性の向上とともに、いわゆる「ソニーらしさ」がある、新製品の開発がミッションとなる。その要となるのが、全世界アカウント登録数が2,000 万を達成している「プレイステーション・ネットワーク(PSN)」で、このプラットフォームを活用した、モバイルエンタテインメント商品の開発を行っていく。
一方、コンスーマー・プロダクツ・グループでは、テレビ、デジタルイメージング(DI)、ホームオーディオ、ビデオといったコンスーマー・エレクトロニクスの中核製品カテゴリーの事業を統括する。このグループが扱う製品は、もともとソニーの収益を支えて来た分野であり、収益力向上と継続的な成長を可能にする体制作りが目的となる。また、新興市場の開拓も大きなミッションだ。
このグループのプレジデントには、現業務執行役員EVP 兼テレビ事業本部長の吉岡浩氏が就任し、吉岡は同時に執行役副社長に就任する。
また、両グループにまたがる、ソニーの全製品に共通なソフトウェア・ソリューションの開発・導入を担当する「コモン・ソフトウェア&テクノロジー・プラットフォーム」チームと、各事業グループに対してサプライチェーンソリューションの提供する「製造・ロジスティック・プロキュアメント」チームも組織された。
ストリンガー会長は、「最近はサムソンやLGだけでなく、シスコ、HP、アップルなども新たな競争相手として台頭してきている。ソニーの次のステップとしては、これまで築いてきたソニーの力を基盤として、新しい市場やユーザー経験を生み出す製品やビジネスを作り出せるように組織を変えていくことであり、消費者のスタイルを変えるような応用技術のイノベーションをしていくことだ。そのために組織変革やサービス導入の加速化、スピーディなサプライチェーンの確立などの変革が必要だ。そのために実力のある次世代のリーダーのチームを作った」と今回の組織変更の狙いを述べた。 また、社長を兼任する点についてストリンガー会長は、「間に(社長という)別のレイヤーを挟むことなく、新しいリーダーたちのあらゆる努力を直接調整することができるからだ」とその理由を述べた。