天体の名前には有名な天文学者の名前が付けられることが多いが、発見者の名が冠されることもしばしばある。子どものころ、某TVアニメでその名をはじめて聞いたという人も多いはずの「大/小マゼラン雲」は、マゼランが世界一周の航海中にその姿を日誌に記録したことからこう呼ばれるようになった。残念ながら両銀河とも北半球にいては見ることができないのだが。

今回紹介する1枚は、マゼラン雲のうちの小さいほう - 南天の星座・きょしちょう座に位置する小マゼラン雲(the Small Magellanic Cloud)にて、ダイナミックな活動を見せてくれる星団「NGC 346」をハッブル宇宙望遠鏡が捉えた画像だ。

約20万光年先にある散開星団NGC 346。若くて重たい星を数多く含み、星形成が活発に行われている。恒星から発せられる莫大なエネルギーのガスや放射線は星間物質を吹き飛ばすが、密度が濃いために取り残された部分が畝のような稜線を描き出している。右端のほうでは塵がかたまってダストボールのようになり、星団の中心に向かって折り返す矢印のような形をとっている

若い星が発するエネルギーは、自らを育んでくれた星雲を容赦なく削りとり、星形成の場を露わにする。NGC 346には誕生から500万年前後の若い、というより幼い星々が数多く含まれており、これらは自分の力で輝くことができない。よちよち歩きの星を、若くてパワーのある巨大恒星が発するエネルギーからブロックするのは、畝となっても残っている星雲だ。そしてこれらが成長して自ら輝き出すとき、また別の絵がこの銀河に描き出されることになる。