日本IBMは19日、ユーザーとビジネスパートナーを対象としたイベント「IBM Information On Demand Autumn Forum 2008」を開催した。同イベントでは日本で初めてインフォメーション・オンデマンドの中核製品ブランド「InfoSphere」が公式発表されるとあり、箱崎事業所内の会場は朝から満席状態。インダストリー・モデルやユーザー事例の紹介、デモンストレーションなどが行われたが、今回はその中から基調講演の様子をレポートしよう。

情報が持つ価値を解き放つ

日本IBM ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部 IOD営業部 部長の森英人氏

「企業存亡の鍵を握るインフォメーション・オンデマンド、その中核製品ブランド“InfoSphere software”の発表!」と題した基調講演では、日本IBM ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部 IOD営業部 部長の森英人氏が登壇。日本における「InfoSphere」の正式発表と、ソリューション全体概要について解説した。

森氏はまず、IBMが2006年より提唱している「インフォメーション・オンデマンド(以下、IOD)」の概念について、「IODで鍵となるチャレンジは、情報が持つ価値を解き放つことです」と語る。企業の情報活用には「縦割り情報システムの乱立」「大量かつ多様化したデータ」「ビジネスのスピード」「企業内における情報統制」という4つの大きな課題が存在する。このように縦割りの情報システムが個別にデータを格納している状況では、当然ながら必要なデータをすぐに取り出すのが難しい。そこでIODでは、縦割りのアプリケーションとエンドユーザーの間にIODレイヤーを設けることで、必要な情報に対して透過的かつオンデマンドなアクセスを実現したのである。そしてこのIODレイヤーに具体的な機能を提供する製品ソリューションが、今回日本で初めて正式発表されたInfoSphereなのだ。

縦割りの情報を必要に応じてオンデマンドで取り出せるIOD環境

InfoSphereの成り立ちとアクセス手法の進化

森氏は「InfoSphereブランドの立ち上げは一朝一夕でできるものではありませんでした」と語る。まずは2006年のIOD発表に先立ち、2005年よりAscential SoftwareやTrigoなどの各企業を買収。さらに2006年以降も、FileNetやCognosといった核となる技術を持つ企業と共にIODを推進してきた。このように多大な投資と技術的な努力を重ね、現在に至ったのである。

これまでIBMが実施してきたIOD推進に関する活動

また、企業における情報へのアクセス手法も技術の進化とともに大きく変わってきた。古くは業務プロセスからダイレクトに情報へアクセスする時代があり、1990年代には基幹システムからデータを抽出するデータウェアハウスの概念が誕生。そして新たな手法として生まれたのが、InfoSphereによる包括的なIODソリューションだ。

技術の進化により変わってきた企業における情報へのアクセス手法

InfoSphereを構成する4種類のコンポーネント

InfoSphereは主に「InfoSphere Information Server」「InfoSphere MDM Server」「IBM Industry Models」「InfoSphere Warehouse」という4種類のコンポーネントで構成されている。

まずInfoSphere Information Serverは、信頼できる情報流通の仕組みを単純化された基盤で提供する情報流通フラットフォームだ。注目は個別機能が統合メタデータ管理やパラレル処理機能などの共通基盤上でシームレスに結合されている点で、森氏は「他社では『エクスポートとインポートを使えば同じことができる』と言いますが、そこにはタイムギャップやエラーが発生する可能性もあり、オンデマンドな情報流通フラットフォームには不向きです」と、自社の優位性をアピールした。

InfoSphereは、主に4種類のコンポーネントで構成されている

情報流通フラットフォーム「InfoSphere Information Server」

InfoSphere MDM Serverでは、多種多様な用途とドメインをサポートするマルチフォームMDM(Master Data Management)を提供する。これは商品用やロケーション用などで分かれるドメイン特化型ソリューションではなく、多様なマスターデータと各ドメイン間の関係を管理するためマルチなサポートが可能。さらに、マスター情報の定義や作成、同期化を行う「Collaborate」、マスター情報をビジネスオペレーション用サービスとして提供する「Operationalize」、リアルタイムの分析を推進する「Analyze」など、異なるユーザーやアプリケーションによるマスターデータ利用に対応できる豊富な活用スタイルも特徴だ。

マルチフォームMDMを提供する「InfoSphere MDM Server」

IBM Industry Modelsは、長年の経験をベースに業界別のノウハウを製品として提供するもの。ビジネスとITのコラボレーションやコミュニケーション手段の提供に加え、ビジネスパフォーマンスの最適化と統合プロジェクトへの対応、業界固有の評価指標が入ったテンプレート完備といった特徴がある。また、InfoSphere Information Server、InfoSphere Warehouse、Cognos 8 BIとの連携によりエンド・トゥ・エンドのパフォーマンス最適化も実現している。

業界別のノウハウを製品として提供する「IBM Industry Models」

InfoSphere Warehouseは、共通の高性能並列処理機能やディスク圧縮機能、マート用キュービング機能などをワンパッケージソリューションとして提供するもの。森氏は「従来のウェアハウスと違い、大量のデータ処理に耐える高性能並列処理機能や、多くのディスクを購入していたお客様の投資を削減するディスク圧縮機能を採用しています。さらにはCognos製品との密な連携により、複雑なキューイング処理を要求するような大量データの分析や検索など、数多くの要求を果たせるようになっています」と語る。

各種機能をワンパッケージソリューションとして提供する「InfoSphere Warehouse」

森氏は最後に「先進企業では既にInfoSphereを中心としたIODへの取り組みが行われています。ぜひ皆様もこうした先進企業のノウハウを良いとこ取りし、業界におけるリーディングカンパニーとして成長していただきたいと思います」と語り、講演を締めくくった。