政府は31日、硫化水素自殺者の急増などの事態を受けた対策を行うため、改正自殺総合対策大綱を閣議決定した。硫化水素製造方法などのネット上の有害情報をISPに削除依頼する「インターネット・ホットラインセンター」の活動支援が改正の主な内容となっている。

警察庁によると、2008年1月から9月までの硫化水素による自殺者は876人に達し、昨年1年間(29人)の約30倍にもなっている。また、2008年の硫化水素自殺者のうち、約4分の1の事案で第三者に被害が生じている。

政府は自殺総合対策大綱を2007年6月8日に閣議決定したが、硫化水素自殺の急増と、2007年までに年間自殺者が10年連続で3万人を超えたことを受け、おおむね5年で見直すとしていた同大綱の見直し期間を短縮し、改正自殺総合対策大綱を今回閣議決定した。

改正大綱では、硫化水素を製造する方法などがインターネット上で出回ったことが硫化水素自殺の急増に結びついたとの認識から、ネット上の自殺関連情報対策の推進が柱となっている。

具体的には、第三者に危害を及ぼす恐れの高い物質の製造方法を教示し、その製造を誘引する情報について、ネット上の有害情報の通報を受け付け、ISPなどへの削除依頼を行っているインターネット・ホットラインセンターの取り組みに対する支援を行う。

また、第三者に危害の及ぶ可能性のある自殺の手段を紹介するなどの情報への対応のあり方について、民間団体による取り組みを支援する。

さらに、ネット上の違法・有害情報の検出を行うための技術開発の促進や、青少年ネット規制法で義務付けられた未成年への携帯フィルタリングの普及なども盛り込まれている。

政府では、大綱決定時に人口10万人当たりの自殺者数を2005年の24.2人から2016年には20%以上減少させる目標を掲げている。