オリバー・ストーン監督によるブッシュ米大統領の伝記映画『W.』の公開が間近に迫っている。『プラトーン』(1986)や『JFK』(1991)、『ナチュラル・ボーン・キラーズ 』(1994年公開)などの作品でもかつて物議を醸した同氏の作品だけに、今回も例に漏れず議論を呼んでいるようだ。これを受け、米「Yahoo! Movies」では、"過去10年で最も議論を醸した映画5本"と題した特集記事を掲載している。

記事によると、"賛否両論"映画筆頭は『パッション』(2004)。メル・ギブソンが私財を投じて製作・監督した作品で、キリストの受難と磔刑を全編アラム語とラテン語の台詞で映画化したもの。あまりに残虐な映像と、反ユダヤ主義的な描写が人々の批判を浴び、最も高いR指定を受けた。

続いては、マイケル・ムーアによるドキュメンタリー映画『華氏911』(2004)。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件をめぐる、当時のブッシュ大統領とビンラディン家を含むサウジアラビア王族との密接な関係を描き、ブッシュ政権を批判した。同作品は、第57回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で最高賞パルムドールを受賞するなど人々の賞賛を集めた一方で、"恣意的な編集がされている"、"やらせ"等の多くの批判も後に受けることとなった。

3本目は、ヴィンセント・ギャロが製作、脚本、監督、主演を務めた『ブラウン・バニー』(2004)。ギャロ自身は、かつての恋人への思いを募らせる男のロードムービーと位置づけたが、世間の目の多くは過激な性描写に向けられ、アメリカ一著名な映画評論家のロジャー・エバート氏からはカンヌ映画祭で「史上最悪の映画」と酷評された。

そして『ブロークバック・マウンテン』(2005)。E・アニー・プルーの同名短編小説『Brokeback Mountain』 を、アン・リー監督が映画化した作品で、1960年代のアメリカを舞台に惹かれ合う二人の若い男性の姿が描かれる。ヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールというハリウッド二大スターが同性愛者を演じるという稀代の映画で、世間のさまざまな議論を呼んだが、ヴェネツィア国際映画祭では金獅子賞、ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ部門)、監督賞、脚本賞、主題歌賞の4部門を受賞。アカデミー賞では8部門でノミネートを受け、作品賞の最有力候補とされたものの、同性愛に嫌悪感を抱く保守派の審査員によって同賞の受賞は『クラッシュ』に奪われた。

最後は、ダン・ブラウンによる同名小説が原作のサスペンス映画『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)。レオナルド・ダ・ヴィンチによるキリストの絵画「最後の晩餐」には、「イエス・キリストはマグダラのマリアと結婚しており、磔にされた時、彼女はキリストの子供を身ごもっていた」という暗号が含まれているという設定で展開するストーリーが「キリストを冒涜している」としてローマ教会が反発。ボイコット運動を呼びかけた結果、世界各地で上映禁止やR指定となる騒動に発展したが、同作品と同じロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で続編の製作が来夏の公開に向けて現在進行している。

ちなみに、今後"物議を醸した問題作"のラインナップに加わりそうな『W.』は、オリバー・ストーン監督が『JFK』、『ニクソン』(1995)に続いて手掛けるアメリカ大統領の伝記映画で、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の半生を描く。ブッシュ大統領を演じるのは『ノーカントリー』での熱演が記憶に新しいジョシュ・ブローリン。全米公開は10月18日の予定で、次期大統領選を直前に、現在も存命する前職者にスポットを当てた内容が一大センセーションを巻き起こしそうな気配だ。