東京・銀座のソニービルで21日、「ソニーで感じる『シネマ歌舞伎』展~ハイビジョンで巡るシネマ歌舞伎の舞台裏~」(10月22日まで開催)のこけら落としイベントが行なわれ、「シネマ歌舞伎」最新作となる『人情噺文七元結』の山田洋次監督と中村勘三郎が出席。大の歌舞伎ファンという内田有紀も応援に駆けつけ花を添えた。

写真左から、内田有紀、中村勘三郎、山田洋次監督

「シネマ歌舞伎」は、歌舞伎の舞台公演をデジタルシネマカメラ(F23)で撮影し、スクリーンで上映する、いわゆる映画とは違う「映像作品」。『人情噺文七元結』は、三遊亭円朝が口演した落語が原作の歌舞伎で、大の博打好きである主人公・長兵衛と彼をとりまく人たちの人情物語で、 山田は、中村の要請に応えてシネマ歌舞伎「人情噺文七元結」を初めて監督した。展示では、「シネマ歌舞伎」の見どころ解説パネルや、メイキング映像などが公開されている。

中村は「祖父の六代目尾上菊五郎が『鏡獅子』で、小津安二郎監督に撮っていただいたという過去がある。小津さんと祖父がやれるならば、俺も日本の巨匠にお願いしたらどうだろうとね。だめもとでね。こうして引き受けてくださって…」と振り返った。山田は「勘三郎さんは、脚本をいじっていただいていいと言う。『そんなことしていいの?』って思いましたよ」と依頼を受けた当時の緊張感を思い出していた。

「山田監督の"人情"と、勘三郎さんの物語にどんどん引き込まれていく感じです」と内田

イベントには、大の歌舞伎ファンという内田有紀もゲストとして登場し、イベントを盛り上げた。「内田さんは、毎回舞台を見に来てくれるんですよ」(中村)、「一緒にゴハンを食べたよね、彼と」(山田)と2人から歓迎された内田は「歌舞伎を生で見るのもすばらしいことですが、このシネマ歌舞伎で、役者の息づかいや、表現の豊かさを見ることができる」と応援した。

シネマ歌舞伎の特徴について、中村は「汗のひとつまで映し出しちゃう。だから、嘘の芝居をしたら全部見えちゃうから怖い部分もある。でも、わざわざ国立劇場などに行かなくても、視聴覚室でも見ることができるようになる。こんなにありがたいことはない。だから、記録として残るもうれしさもあるし、怖さもある。そこが面白いですね」と語った。

「うちの親父も喜んでると思いますよ。なにせ、親父の時に撮ったフィルムは(感光しちゃって)なくなっちゃったんだから(笑)」と笑顔で語る中村

「いろいろな『文七』があるが、このシネマ歌舞伎の『文七』もそのひとつ」と山田監督も太鼓判を

また、シネマ歌舞伎の将来性について山田は「映画では味わえない、映像や音響の技術で、劇場にいる雰囲気をいかに工夫しているかがわかるはずです。『特等席で見るとこんなに面白いのか!』という力強いメッセージが伝わってくるはず。シネマ歌舞伎によって映画館も活性化していけばいいなと思いますね。『連獅子』もうっとりしますよ」と語った。

『人情噺文七元結』は10月18日から、『連獅子』は12月27日からで公開される