日本オラクルは、製品・設備の保守サポートに必要となる部品の調達、配置の計画を支援する新アプリケーション「Oracle Service Parts Planning」を発表した。これらの部品の需要を予測、在庫の拡大を抑えると同時に、サービス水準を維持、収益性を向上させることを図る。主として売上高が1,000億円規模の大手製造業、家電、事務機器、産業機械、建設機械、装置や設備などの業種からの需要を見込んでいる。

「Oracle Service Parts Planning」は、同社の需要予測製品「Oracle Demantra」の統計予測エンジンを用い、保守用部品の需要を予測する。100万点程度の部品を扱うことができ、季節により需要の頂点、底が変動する製品、需要が間欠的な製品など、それぞれの事情に応じた需要パターンを勘案するとともに、保守する製品の出荷実績、使用期間、返品といった諸要因も考慮しながら、より正確な予測ができる。同社によれば、全体的には、10%程度予測精度が向上しているという。

今回の製品の特徴は、単なる需要予測に留まらず、補充計画にも対応していることだ。新旧の部品の互換性、部品在庫を自社内に置くか、あるいは、なるべくエンドユーザーに近い場所に置くかといった、部品の再配置や輸送の計画などにも適応している。また、新品の部品を調達する際にも、在庫をどのくらい使いきっているか、といった点に着目するなど、製品を提供している製造業などの企業が、エンドユーザーに対するサポートの質を低下させず、同時に部品の在庫が過剰になってしまうことを防ぐ。さらに、どの部品の在庫をより多く保持するかといった優先順位、修理するか、あるいは新品を購入するかの判断、部品供給者とのやり取りの管理、最適化といった要素までをも視野に入れている。

需要予測とサービス計画が効率的に連携できるよう、サービスプランナーワークベンチと呼ばれる、サービス計画担当者向けのダッシュボードを用意していることも注目される。サービスの部門を横断した全社的な部品在庫状況を可視化することができ、部品の需要予測、補充計画、返品などを、単一のユーザーインタフェースにより、効率的に実行することが可能になる。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部の塚越秀吉部長

さらに、「Oracle Service Parts Planning」は、スペア部品管理の「Oracle Spares Management」、修理プロセス管理の「Oracle Depot Repair」、購買業務管理の「Oracle Purchasing」、在庫取引管理の「Oracle Inventory Management」、販売注文管理の「Oracle Order Management」など、「Oracle E-business Suite」に属する実行系の業務アプリケーションと連携して活用することで、サービス部品についての販売、購買や在庫業務を標準化、迅速化する。

同社が保守用部品の最適化製品に注目したのは、最近、製造業ではサービス業務の重要性がいっそう向上、サービス業務の質の高低が有料顧客の囲い込みを左右するようになってきたことが大きな理由のひとつだ。こうした状況を背景に、サービス業務での部品計画と、サービス実行の連携が求められることになる。同社 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部の塚越秀吉部長は「的確な保守サービスは、顧客満足度を向上させ、差別化要因になる。既存顧客の維持は、高い利益率につながる」と話す。

日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 岡田行秀シニアディレクター

さらに重要なことは、最適なサービス計画が企業の収益性、効率性の改善にも直結しているということだ。従来、このような計画は「実際、困難であり、表計算ソフトでの計算、担当者の勘と経験に依存していた」(同社 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進本部 岡田行秀シニアディレクター)のが実態だった。とともに保守用部品在庫の適正化には「経営陣もなかなか踏み込めなかった。これらの部品の欠品が出れば、サービスの質低下につながりかねない懸念があり、この領域の在庫はいわば聖域化していた」(同)ため、「かなり多目の在庫が確保されていたが、増えすぎれば、経営を圧迫することになりかねない」(同)という。

「Oracle Service Parts Planning」の目的は、サービス水準と利益確保を両立させることにある。必要な場合に保守用部品が切れてしまうなどという事態にならないようにすると同時に、部品の在庫も、多すぎず少なすぎないような最適な状態を維持していくことを図る。この製品が製造業にもたらす「最大のメリットは、在庫費用を大きく削減できること」(同社)だ。保守サービス事業の支援とともに、従来、見過ごされがちであった部分の在庫圧縮は、新たなコスト改善の要素となることから、同社では、製造業からの需要獲得に期待をかけている。