日本HPは29日、経営戦略や事業目標に基づくITプロジェクト管理を支援するITILv3対応の新ソフトウェア製品「HP Project and Portfolio Management 7.5(以下、PPM 7.5)」を、9月1日より出荷開始すると発表。同製品の戦略的位置付けや日本での展開などを含む記者発表会を行った。

ITのビジネス成果を最大化

今回発表された「HP Project and Portfolio Management 7.5(以下、PPM 7.5)」は、企業におけるIT戦略立案を管理するための新ソフトウェア製品だ。複数プロジェクトの横断的な管理に加えて、人材や予算の割当てなど経営戦略視点の分析を実施、効率的な業務支援とコストの最適化を実現することができる。また、ITILv3に対応しており、同社のソリューションと組み合わせることで総合的なITライフサイクルの管理も可能になる。

HPソフトウェア事業本部 マーケティング部 部長の河口雄一郎氏

HPソフトウェア事業本部 マーケティング部 部長の河口雄一郎氏は「弊社ではITを最適化するための統合ITマネジメント戦略「BTO(Business Technology Optimization)」を推進しており、いかにITがビジネスに対して具体的な成果を上げられるかが重要です」と語る。

現在、ITとビジネスの間には共通の形でコミュニケーションがとれないなど基本的なギャップが存在している。また、ITライフサイクルから見た場合には「IT戦略立案」「アプリケーション開発」「運用」という3つの工程間で情報の共有化が図られていないためフィードバックができず、結果として改善に結び付けられない状況にある。 BTOはこのギャップを同社のソフトウェア製品群で埋めることにより、ITのビジネス成果を最大化しようというもの。運用面を最適化する「OpenView」とマーキュリー・インタラクティブの買収によるアプリケーション開発の強化、さらに今回IT戦略立案を管理する「PPM 7.5」が追加されたことで、ITライフサイクル全体の改善が可能になるという。河口氏は「PPM 7.5はある意味でHPソフトウェア製品全体におけるフラッグシップという位置付けの製品です」と語る。

同社が推進する統合ITマネジメント戦略「BTO(Business Technology Optimization)の概念図

同社ではITILv3の考え方に沿った統合的なITサービス管理を実現することにより、ITサービス管理市場におけるリーディングポジションの強化を目指す。ターゲットに関しては、従来製品が運用や品質管理系の部署をメインとしていたのに対し、PPM 7.5では大手企業の上流工程に位置するIT部門が対象。ITガバナンスの導入やリソースの最適化、グローバルITなどを目指す企業にも有効となる。また、今後の具体的な方策については直販およびパートナー企業経由でのビジネスが並行して展開されるという。

開発および運営の業務とITILv3が定義する各フェーズとの関係

直販ではコンサルティングサービスや教育サービスを含む総合的なHP ITSMソリューションを展開、パートナーに関してはコンサルティングファームとの積極的な協業も進んでいるようだ。

将来的にはITライフサイクル全体の自動化も

HPソフトウェア事業本部 マーケティング部の長谷修氏

続いてHPソフトウェア事業本部 マーケティング部の長谷修氏より、PPM 7.5に関する開発背景と具体的な機能解説が行われた。

ITILv3では「サービスストラテジー」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」、さらにこれらをサイクルとして回す「継続的サービス改善」という5つのフェーズが定義されており、それぞれが開発および運営の各業務と密接な繋がりを持っている。

ITサービスを提供するには開発と運用の連携が必須になるため、ITILv3のフレームワークで両者の間にある壁を取り除くのである。そこで、サービスのストラテジ部分を担うべく開発されたのがPPM 7.5というわけだ。製品構成としては、プロジェクトの状態を可視化する「ダッシュボード」に正確かつタイムリーな情報を提供するため「Project Management」「Portfolio Management」「Program Management」「Financial Management」「Time Management」「Resource Management」「Demand Management」という7つのモジュールを用意。さらにこれらの機能の基盤となる「Foundation」にはワークフロー、管理、セキュリティ、オープンAPIなどが含まれている。

「HP Project and Portfolio Management 7.5」の製品構成

機能面の具体的な特徴としては、まず「Portfolio Optimization機能」の搭載が挙げられる。これは複数のプロジェクトに関してユーザー側の望む条件に基づくシナリオ分析を行い、最適な組み合わせや優先順位を自動計算するというもの。予算や効果、重要度、リスクなども数値化しスコアリング、色別のグラフで表示できるためプロジェクト全体を通した視覚的な判断が可能で、直観的に設定できるワークフローも備えている。

直観的な設定が可能なワークフロー

また、リクエスト単位でビジネスプロセスを管理するため、プロジェクトや非プロジェクトを問わず全要求を統合管理できるのもポイントとなる。これにより全社的に時間やスキルなど人材配分を過不足なく最適化し、全社的な人材リソース管理が可能だ。そのほか、基本的なデータに関して「Microsoft Office Project Standard/Professional 日本語版」との双方向連携も実現している。

予算や効果、重要度、リスクなどを視覚的に表示するバブルチャート

複数プロジェクトも一元管理が可能

ITライフサイクル全体の統合的な管理については、現在のところ英語版でITILサービス管理製品「HP Service Manager software」、変更管理製品「HP Change and Control Manager software」、アプリケーションの品質管理製品「HP Quality Center software」との連携を実現。将来的には日本語版も提供され、ITライフサイクル全体の自動化を視野に入れているという。なお、製品の価格は最小構成で710万4720円から。年内は最初のユーザーを見つけることに注力し、発売後1年間で2ケタの実績を目指すという。