BOOK REVIEW - Web開発者/デザイナー待望の国内初jQuery本

本書はJavaScriptライブラリ「jQuery」の解説書だ。これまでjQueryは技術情報誌やAjax関連の書籍で取り上げられることはあったが、jQueryに特化した書籍としては日本初となる。

日本初のjQuery本は真っ赤なカバーが目印

Ajaxの流行によってJavaScriptが注目を集めるようになってから、さまざまなJavaScriptライブラリ/フレームワークが登場してきた。当初はAjaxの非同期通信やDOM操作を簡単に行えるようにしたり、ブラウザごとのAPIの差異を吸収することを目的としたものが多かったが、その後アニメーションやUIコンポーネントなどの機能を持つものも登場してきている。いまやこれらのライブラリはJavaScriptを駆使したアプリケーションを開発する上でなくてはならない存在だ。

jQueryもこれらのJavaScriptライブラリの1つで、もともとprototype.js(最もメジャーなJavaScriptライブラリの1つ)に触発されて開発されたライブラリだ。"write less, do more"というキャッチコピーの通り、少ない記述で多くのことを実現するためのさまざまな機能が提供されている。本書ではjQueryの豊富な機能をコア機能、アニメーション、UI(jQuery UI)、Ajax関連機能の4つに分けて解説している。jQueryの主要な機能はほぼ網羅されており、jQueryのすべてを知るには最適な書籍といえるだろう。

jQueryのリファレンスとしても利用可能

jQueryのリファレンスとしても利用価値大

本書のターゲットはHTMLやJavaScript、CSSに関してある程度の知識と経験を持ったWeb開発者/デザイナだ。「jQueyで作るAjaxアプリケーション」というタイトルからは、jQueryを使用してAjaxアプリケーションを開発するための解説書というイメージを受けるが、実際はjQueryのリファレンスに近い印象だ。Ajaxアプリケーションを作りながらjQueryの機能を学ぶというチュートリアル的なスタイルではなく、jQueryのさまざまな機能が簡単なサンプルと共に解説されている。

サンプルは比較的シンプルなものが多いが、種類は豊富で実行結果を豊富なキャプチャで示すなど非常にわかりやすい。ただし、サンプルが全体的に小粒であるため、わかりやすさはあるもののもう少し実用的なサンプルがあってもよかったのではないかと思う。

各機能の解説ではサンプルだけでなくAPIが一覧表でまとめられているので、一通り読んでjQueryの機能を把握したあとはリファレンスマニュアルとしても長く使える一冊だ。もちろんjQueryのWebサイトには充実したリファレンスマニュアルが用意されているが、日本語で読めること、いつでも手元に置いておけることのメリットは大きいだろう。

Ajaxに関しては駆け足になっている感も…

肝心のAjax関連機能については最後で軽く触れられるだけにとどまっている。JSONやJSONPもカバーしており、jQueryのAPIの解説としては充分な情報が記載されているものの、Ajaxの概念や技術的な背景に関する説明は充分とはいえず、他の機能の解説と比較すると若干駆け足な感が否めない。

また、前述のとおり本書に掲載されているサンプルはあくまでjQueryの個々の機能の説明に特化した小さなものなので、実際に高度なAjaxアプリケーションを構築するにはこれらの機能を工夫して組み合わせなければならない。つまり、本書でAjaxを学ぶというよりは、すでにAjaxの基礎を理解している人向けの内容となっているのだ。本書の前半部分では初心者向けのケアもしっかりされているだけに、肝心のAjax部分が駆け足になってしまっているのは多少残念なところだ。

すべてのjQuery利用者にオススメの一冊

とはいうものの、本書はこれからjQueryを使ってみようという開発者はもちろん、すでにjQueryを使用している開発者がリファレンスとして利用する書籍としても適している。jQueryを利用するすべての開発者にオススメの一冊だ。

jQueryは煩雑な処理になりがちなDOMやCSSの操作といった処理を簡潔に記述することができる。jQueryのようなライブラリを使わずにこれらの処理を実装したことのある読者は本書のサンプルを見てきっと「この処理がこんなに簡単に記述できるのか!」と驚くはずだ。ぜひ実際にサンプルを動かしながら読み進めてみてほしい。jQueryの機能を知ることで、Webアプリケーションにおける新たなアイデアも生まれるはずだ。

また、著者の沖林氏が序文で述べているとおり、jQueryのソースコードにはjQueryの便利な機能を実現するためのさまざまなJavaScriptプログラミングテクニックを見ることができる。本書を片手にjQueryを使いこなすことができたら、次のステップとしてjQueryのソースコードリーディングにトライしてみるのもいいだろう。