シトリックス・システムズ・ジャパンは9日、従来製品比で最大2.5倍のWebアプリケーションをデリバリーできるデータセンター向けWebアプリケーション配信アプライアンス「Citrix NetScaler MPX」を発表した。

クアッドコアCPU×2と32GBメモリを搭載した「MPX-17000」

日本におけるデータセンターの静的イメージを一新

マーケティング本部 本部長の山中理惠氏

「Citrix NetScaler MPX」は、CPUのコア数増加やメモリ容量のアップなどにより、最大で15Gbpsのシステムスループットを実現したデータセンター向けWebアプリケーション配信アプライアンス。新製品の詳細説明に先駆け、まずマーケティング本部 本部長の山中理惠氏より日本におけるデータセンターの現状が紹介された。

山中氏はインプレスR&Dによる「インターネット白書2007」の統計データを例に挙げ、「日本でデータセンターを利用している企業は12.6%、レンタルサーバなどを利用している企業は43%と、国内での需要はまだ十分に伸びる余地があります」と語る。さらにデータセンターへの満足度については、満足な点として「運用コストが安い」(37.8%)、「サーバ監視・保守サービスが優れている」(16.3%)、「耐震・防火などの安全性が高い」(15.9%)を、不満足な点としては「運用コストが高い」(14.8%)、「サポートが悪い」(3.7%)、「入退室が煩雑」(3.5%)などを挙げ、全体的な意見としてユーザーは概ね満足している傾向を示した。ちなみに利用目的としては「社外向け企業情報ホームページ」が49.8%、「企業内向け情報システム」が48.4%、「コンテンツサイト事業の運営」が35.7%を占めている。

日本におけるデータセンターの満足度(出典:インプレスR&D「インターネット白書2007」

しかしこれらの結果は、裏を返すと日本ではデータセンターの世界だけで完結してしまっているという見方もある。日本におけるデータセンターのイメージとして、セキュリティ的に堅牢で電源が落ちることはなく、高速な専用回線につながっているなど、単純に社外の安全な場所にサーバが置いてあるような静的なイメージが定着しているのだ。このような背景から、同社では数年前より「Transform your datacenter into a delivery center」というキーワードを掲げて事業に取り組んでいる。

これは、従来データセンターの中だけで考えられていた静的なイメージを一新するもので、アプリケーションを利用しているユーザーにどのようなユーザーエクスペリエンスを提供するかを含め、より包括的なソリューションを展開していこうという考え方である。山中氏は「エンタープライズ企業がすべて自社でデータセンターやネットワークを持つ時代から、インターネットを使っていかに企業がコンテンツ側にフォーカスし、より生産性を向上させるようなソリューションを作っていくかという部分に問題がシフトしてきています」と語る。

こうした背景から、次世代のITインフラでは「コンプライアンス・セキュリティ」「ビジネスの継続性とDR」「Time to Market」「管理制」「Mobility」などが重要になり、単純かつ高速でオンデマンドなコンピューティングおよびネットワーキングが求められる。その中ではネットワークやアプリケーション、デバイスなどをどのように分離していくか、さらにはセキュリティやアクセスコントロールの強化、仮想化によるダイナミックキャパシティ、予算の最適化といった部分も必須といえる。こうした世界を実現するためのフレームワークが「Citrix Delivery Center」なのである。

「Citrix Delivery Center」を形成する要素

今後はシステムスループットを最大20Gbpsまで拡張

シニアプロダクトマネージャの山村剛久氏

今回発表されたCitrix NetScaler MPXは、デュアルコアCPU×2と16GBメモリを搭載した「MPX-15000」、クアッドコアCPU×2と32GBメモリを搭載した「MPX-17000」の2モデルをラインナップ。これにより15Gbpsのシステムスループットを実現、従来製品と比べて最大2.5倍のWebアプリケーションをデリバリーすることが可能になっている。また、効率性の高い低消費電力設計により、Webアプリケーションデリバリー向けの消費電力を約50%低減。さらに、「Citrix XenServer」と統合することでサーバリソースの自動的なプロビジョニングと割り当てが可能となり、基幹アプリケーション間でのサーバリソース共有を高い柔軟性と低コストで実現している。シニアプロダクトマネージャの山村剛久氏は「今後はOSのバージョンアップにより、システムスループットを最大20Gbps前後まで高速化する予定があります」と語る。

新製品を含む「Citrix NetScaler」のラインアップ

ソフトウェアパッケージはいずれも「Standard Edition」「Enterprise Edition」「Platinum Edition」の3種類が用意されており、同社認定の販売パートナー経由で9日より出荷を開始。希望小売価格は「NetScaler MPX 1500」が2,100万円から、「NetScaler MPX 1700」が2,800万円からとなっている。