SAS Institute Japan 吉田仁志社長

SAS Institute Japanは、BIプラットフォーム製品「SAS 9.2」を発表した。2008年第3四半期(7-9月)の後半頃に出荷が開始される。データの統合から蓄積、予測的分析、可視化、共有化までの機能を備えており、SAS9で本格化されたメタデータを基礎とした処理のアーキテクチャーを継承するとともに、データ統合機能、分析機能、セキュリティ機能を強化、企業経営に対し、先を見通す力、「予見力」をもたらすことを主題としており、吉田仁志社長は「次にどうなるかをある程度察知できる企業が優位に立つ」と話す。

「SAS 9.2」の統合メタデータアーキテクチャでは、データ抽出、蓄積、分析、レポートまでの工程に渡り、メタデータを介して一元管理している。「全体の効率性が高まる。すべての変更はメタデータを介し、プロセスを横断して反映されることになり、情報活用のスピードが速くなり、データの一貫性も維持される」(同社 宮田靖 執行役員ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長)ことが大きな利点であるという。

製品の基盤である「Enterprise Intelligence Architecture」のデータ統合機能の点では、同社の子会社であるDataFluxのデータ品質管理ツールの日本語版が完全統合され、ユーザーはデータ品質機能のコンポーネントを容易に構築・再利用できるほか、データをモニターし、品質の維持を行うことができる。また、ユーザーインタフェースは視認性が向上化したほか、デバック機能は、ステップごとの実行や、任意のステップからの実行が可能になるなど開発生産性を大幅に向上させている。

セキュリティ関連では、エンドユーザーの企業内での役割に応じた権限管理、シングルサインオン対応を強化した。また、管理者向けには機能では、稼動状況のモニタリング、ログ管理などにも対応しており、企業に求められる内部統制強化、危機管理、社会的責任といった課題への回答を用意している。

「Enterprise Intelligence Architecture」は、64ビットCPUをネイティブサポートするとともに、Windows Vistaにも対応している。また、VMware ESX Server、Windows Terminal Services、Citrix Presentation Managerなど主要な仮想化技術への対応も強化された。

ストレージの領域では、OLAPキューブへの差分更新を採用した。また、外部のデータベースなど、多様なデータソースに透過的にアクセスすることを可能にする統合ハブ機能「SAS Table Server」を備えている。

表現力の点では、グラフの種類を増やした。たとえば、タイルグラフでは、タイルの大きさで売上げを、色で利益率を表すなど、複数の情報を一度で表現できるようにしている。また、レポーティング時の条件指定機能の拡張やドラッグアンドドロップによるレポート作成・参照機能の拡張、レイアウトの自動変更機能など、操作性も向上されている。

SAS Institute Japan 宮田靖 執行役員ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長

宮田執行役員は「プラットフォームの強化により、いっそうソリューションの機能性、使い安さが高まる。他社の製品は、買収・合併によりラインナップを整えてきた例もあるが、当社は、創業以来の統計解析ツールの分析機能を発達させる流れのなかでBIを充実させてきた。この点が他社とは大きく異なる」と指摘した。

同社は今回の製品で「予見力」を前面に据えている。従来のBIツールでは、まず「見える化」により、過去、現在の企業の姿が映し出されたわけだが、BIは「状況がわかっただけではなく、因果関係を分析し、それぞれの事象を関連付け、この先どうなるかを予測することが重要」(吉田社長)になる。今後の方向性として同社では「BIは単独のツールとして使う時代は終わった。予見力を備えたインテリジェンスソリューションが必要であり、それがあらゆるアプリケーションの『裏』で走るようになるのではないか」としている。

昨年は米オラクル、米マイクロソフト、米IBMなど大手IT企業が続々と、有力なBIベンダーを傘下に収め、業界地図が大きく変わった。吉田社長はこれについて「BI市場は統合が進んだといわれるが、買収・合併は企業の都合で行われるのであり、BIユーザーによりメリットをもたらそうとの視点で実行されるのではない」と述べ、いまや数少なくなった独立系BIベンダーとしての立場を強調した。